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たすけたまへ、たのむ

 部派仏教であれ大乗仏教であれ密教であれ、一般的に仏教は自分が修行して悟りを目指すのが基本であるが、浄土真宗では自力の修行を否定し阿弥陀如来の絶対他力にまかせる事を旨としている。自力を頼みとしないために慢心が抑えられる利点はあるが、作法や言葉の面で一般の仏教との乖離はあり、しばしば誤解の元となっている。  例えば、一般に神仏に向かって「たすけたまへ」「たのむ」と言えば何かしらの祈願をしていることになるが、浄土真宗の場合は違う。自分の望みを神仏に求めたのでは絶対他力にならない。真宗門徒の「たすけたまへ」は阿弥陀如来が一切衆生を助けるといっているのだから、「ああ、なら助けなさいませ」というような許諾のニュアンスであり、「たのむ」のはお願いしているのではなく阿弥陀如来の本願力をたのみ(頼り)にしているという帰依の表明となる。  現実的にいって阿弥陀如来に帰依していようがいまいが、世の中が自分の思い通りになることは無く、その本願力をたのみにするとは死後に浄土に生まれ仏になるとの確信であり、究極的なナンクルナイサーであると同時に自分の不甲斐なさを日々恥じ入るのだ。それゆえ自然に善いことをするようになる傾向はある。  だが、こういう発想なので浄土真宗的視点では祈願や祈祷は、他力をたのめない信仰心の低い行為だということになる。内輪でそう思うのは良いのだが、それを根拠に他宗派を攻撃するのはやめていただきたいものだ。

結婚式の加害性

 人の幸せを喜び、不幸を悲しむのは、慈悲を重んじる大乗仏教的では当然のことだ。  ここ数日、結婚式の加害性なる言葉がネット界隈を賑わせているが、他人の幸せを妬み、他人の不幸を望むのは、我に執着した煩悩の表れだと言える。  日本では結婚式の時だけキリスト教の唯一神に祝福を受ける夫婦が多いが、唯一なる神の祝福を受け神に誓った夫婦は、神の愛を地上に顕現させる使命を負っている。要は、神が望むような愛にあふれる家庭を築く義務が発生するのだ。最近では人前式なる結婚式の形態も増えてきたが、基本的に結婚式は誓約をともなう儀式であり、単に男女がつきあっているのとは違う拘束力が発生する。この儀式はあくまでも内向きの話であり、参列者は見届人というわけだから、結婚式それ自体に他者に対する攻撃性は無い。結婚式に加害されたと思う人がいるのであれば、それは受け手側の妄想だ。  そもそも結婚式の加害性などと言っているが、加害性が生まれる余地があるとすれば披露宴の方では無いだろうか?演出次第によっては新郎新婦や親族や出席者の一部が嫌な思いをすることもあるだろう。しかし、世間的な常識の範囲内での披露宴で幸せそうな新郎新婦を見たせいで惨めな自分が更に惨めになったから結婚式には加害性があるなどと言うのは、結婚式ではなくそんな惨めな思考しか出来ない受け手が自分自身を加害しているに過ぎない。実に可哀想だ。  この話題に関してネット界隈ではミソジニスト達が、披露宴は女性が周囲を攻撃し優位に立つためにやっているなどという色々とこじらせた意見を言っている。一体どれだけの酷い人生を歩めばそういう発想に至るのだろうか?悲しいことだ。

人権や環境に配慮した商品

 ユニクロの作る質の良い製品が驚くほど安価で売られているのは、組織的な人権蹂躙の結果だ。それはウイグル人の奴隷労働だったり、国内でも労働関係の法令を無視した過重労働を強いているから可能なのだ。  このように血塗られた製品を購入することは倫理的に問題があるばかりで無く、十分な対価を得られない労働者の貧困に拍車をかけることにもなる。  もしユニクロが心を改め、中国のジェノサイド政策を批判して奴隷労働による綿花の使用を拒否し、従業員に十分な給料と休養を与えたなら、恐らく商品価格は上がるだろう。だが、従業員の購買力は上がる。  さらに、ユニクロだけでなく他の人道に対する罪を犯している悪徳企業が人権に配慮するようになれば、物価も上がるが人々の購買力も上がり経済には良い循環が生まれる。  人権に配慮された製品の値段はそうでないものより高額になりがちで、人権への配慮で物が買えなくなるとする貧困層からの批判もある。しかし、物の値段が不当に安いのは貧困層が薄給で過重労働を強いられているからであって、まず適正な給与の支払いをさせるように圧力をかけねば、貧困は再生産され続ける。  同様に、環境に配慮した製品も高額になりがちだが、環境から再生産出来ないレベルの収奪を行えば、後々もっと高額になる。水産業などでは特にそうだ。人権問題と違い、水産物の乱獲が問題であることに関しては人々の理解を得やすいが、それでも実際には乱獲されてしまう。ダメなことだと分かっていても目の前の利益を優先させてしまう人が多いのだろう。

女性による妊娠中絶の権利

 ある程度は予測されていたことだが、6月24日にアメリカの連邦最高裁判所が、49年前から認められていた女性の中絶の権利を違憲とした。最近、アメリカの諸州で、母体の危険が予測されようが強姦の結果できた子であろうが人工妊娠中絶を認めないとする法律が次々と成立しているが、許容出来ない。  母体の危険が予測さえる場合はもちろん、女性側からみて望まぬ妊娠であれば、少なくとも妊娠中期前半までの中絶は女性の意志によるべきだ。なお日本の法律で、妊娠22以降の中絶が不能なのは、それ以降は早産したとしても児の生存が見込めるからだ。要は堕胎が殺人になると判断される週数ということになる。  ここで問題となるのは胎児をどの時点で人間であるとみなすかだ。今回の中絶禁止の背景にはキリスト教過激派の関与がささやかれているが、例えばカトリックでは受精卵の時点で人間であるとみなす。アメリカで主流のプロテスタントは派閥が多く見解は一定していないが、中絶禁止を求めている人々も概ね受精卵を人間だと考えている。こうした見解だから全ての堕胎は汝殺すなかれとの彼らの戒に反することになる。一方で、人工妊娠中絶を許容するプロテスタントの派閥もある。また、イスラム教でも中絶に一定の猶予を認める見解も存在する。(シーア派の)イスラム法で運営されているイランには治療的人工妊娠中絶法が存在しており、中絶は絶対的禁忌ではない。イスラム法の解釈にもよるが、胎児に魂がこもるのが受精から約4ヶ月後だという説も存在する。ただ、この場合は女性の権利ではなくあくまでも母体の保護が目的とされている。  ともかく、受精卵から人間であるとみなしている人と、そうでない人の価値観の差は絶望的に大きい。様々な価値観があること自体は別によいのだが、先に言ったようにアメリカでは近年次々と絶対的な堕胎禁止法が複数の州で成立している。今回のアメリカの連邦最高裁判所が中絶に関する女性の権利を否定したのは、この流れを加速させることになる。権利があってもそれを行使しない自由はあるが、今回は権利が否定されたのであり選択の余地はなくなる。深刻な事態だ。

穢土成仏

 悲華経に穢土成仏の話がある。昔々、阿弥陀如来と釈迦如来が成仏する前のいくつもあった前世で、後に阿弥陀如来になる人が王様だった世界があり、その家臣に後に釈迦如来になる人がいた。当時の世界観では世界は時間が経つほどに汚れていくとの考えがあったが、当時はまださほど汚れが進んではおらず、お釈迦様の前世である家臣の子が成仏し宝蔵如来となった。これに感化され王様も悟りを得ようと、環境の良い仏様の浄土での成仏を願った。その王子たちもまた浄土での成仏を願うようになった。一方、家臣の他の子らは浄土ではなく汚れた現世である穢土での成仏を願った。穢土で成仏すればそこで苦しむ人々の助けになるが、環境は悪く修行は大変だ。大臣の子らは、まだ汚れがさほど進んでない状態の穢土での成仏を希望した。最後にただ一人、お釈迦様の前世である家臣は、苦しむ人々の救済の為に後々の濁りきった世界での成仏を誓われ、宝蔵如来はお釈迦様の大きな慈悲の心を讃えた。そんな話だ。  劣悪な環境である穢土での成仏は難しい。穢土で苦しむ人を救うためにあえてその難しい行に挑まれ達成したお釈迦様は偉大だ。もっとも、法華経に準拠すれば、お釈迦様はずっと昔から仏であり人間の姿は方便に過ぎないのだが、いずれにしてもお釈迦様の成仏は多くの人々を勇気づけた。  現実世界でも、苦境に打ち勝って大成した人の存在は、多くの苦しむ人の希望となる。だが、その裏には苦境に潰され散っていった膨大な数の人々がいるのを忘れてはいけない。個々人が苦境に負けないタフさを身につけるのは良いが、既に苦境から脱した力がある者は人々が妄想に囚われることなく正しく学べる環境を整えるべきだ。初めから良い環境で良い教育を受けた人達も、苦しむ人たちへの慈悲を忘れてはいけない。  

陰謀論候補

 来たる参議院選挙では陰謀論を唱える候補が多い。昔から変なことをいう候補はいたが、今回は多すぎだ。恐ろしいことに現在でも、陰謀論を唱える国会議員は存在する。今回の選挙で陰謀論議員が増えないように祈る。選挙とは良い候補選ぶのが基本だが、選挙区の候補がどれもアレな場合は最悪の選択を避けるために一票の使うのが正しい。  陰謀論候補のほとんどは当選しまい。だが、オウム真理教の真理党が選挙で惨敗した際に、彼らはそれを国家的陰謀だとの妄想を膨らませ過激なテロへ走っていった。油断は出来ない。  最近でもトランプとQアノン一派は大統領選で負けるやアメリカの議会を襲撃する暴挙に出た。狂った陰謀論者は何をしでかすか分かったものじゃない。治安当局には十分な警戒を願いたい。一般市民も日々彼らを警戒し不審な挙動があれば当局への通報を躊躇してはいけない。

大きな主語としての仏教

 一部の仏教関係者が「仏教では〜」という場合にそれが特定宗派に特有の考え方やお作法であることも多い。こうした言説は、他宗派の人からの反感を買いやすいが、各宗派とも仏教には違いはない。これは、何某宗何某派の仏教解釈を、仏教全体ではという意味に解釈するから起きる問題だと言える。その辺は不本意であっても内向きと外向きの言葉遣いは変えた方が誤解が少なくて済むだろう。  さて、では仏教ではという大きな主語を用いても許される範囲はどこまでだろうか?諸行無常、諸法無我、涅槃寂静の三法印については仏教ではと言っても問題あるまい。一切皆苦を足した四法印は、大乗仏教の常楽我浄との矛盾を指摘する意見があるものの、一般論としての一切皆苦は否定出来ないと思われる。だから、仏教ではとの主語の利用は四法印まではセーフだ。また、初転法輪で説かれたとされる四諦八正道も仏教ではと言ってよい。大乗仏教で最も有名なお経である般若心経では「無苦集滅道」との文言があり、四諦を無とみなすが、空は四諦に含まれる縁起の思想から演繹であり根本が異なる訳ではない。  では、大乗仏教の根幹である空や唯識はどうか?部派仏教からは否定されるだろう。しかし、日本で仏教ではといえば基本的に大乗仏教の事であり、日本ローカルの集まりで前後の文脈から大乗の話だと判っていれば、仏教ではと言っても良い。  それ以外の宗派的な話は、外向きには何々宗ではと注釈を入れた方が気遣いが出来ていると思う。

同性婚

 日本の地裁が同性婚を違憲としたというニュースが国内だけでなく海外でも話題になっている。  同性のカップルが婚姻出来ないために、相続や税金の面で不利になるのは確かに問題だといえる。同性婚反対派は色々と批判をしているが、社会的圧力により同性愛者がしぶしぶ異性と結婚したところで子作りには消極的だし健全な家庭運営が出来るとも思えず、同性婚を認めて不本意な異性との結婚を防ぐほうが、異性愛者にとっては有益なはずだ。個人的には同性婚制度に反対する理由は無い。  だが一方で、日本国憲法が制定された際の、両性の合意云々との文言は、家による強制ではなく二人の男女の個人の意志により結婚が成立するとの意味であるのは明白であり、同性婚は想定外であった。だから、同性婚が合憲でない場合に問題となるのは憲法側の不備であって、そう伝えた判事が悪い訳ではない。別の地方裁判所では違憲との判断もあり見解が分かれるところではあろうが、その場の雰囲気や流れで人間が勝手に解釈を変えていい法律なんて法律の体をなしていない。同性婚を確実に合憲にしたいのならば改憲するべきだ。九条に関しても自衛権が問題ないのは元ネタとなった国際連盟の理念からして当然であるが誤解を招きやすい。日本国憲法はそろそろ変えた方がいいのかも知れない。  さて、世界的にみても今回の日本の司法判断に対しては、概ね前時代的だとの批判が多いが、イスラム圏ではこの司法判断を歓迎する声が大きい。イスラム教では同性愛は禁止されているので当然と言えば当然だ。同性愛が禁止されているのはカトリックでも同様だ。結婚式を教会であげた人も多いだろうが、実は、神に祝福されて結婚した男女が作る家族は神の愛を地上に顕現させる使命を帯びている。彼らにとって結婚とは神聖で特別なものだ。彼らの価値基準では、同性愛者のペアが「結婚」するなど神への冒涜に等しい事になる。  このように、同性婚をしたい人達と反対する人達の溝は深い。だが、一神教の信仰に基づく同性婚の否定だけならば、妥協の余地はある。同性のパートナーが共同生活をするにあたり、結婚と同様の法的権利を認めてそれを「結婚」という名詞では呼ばなければ済むことだ。そもそも同性婚をしたい人達の中で神からの祝福を受けたい人はそう多くはあるまい。単なる名称の問題ならばこの辺が落とし所ではないだろうか?

SDGs ゴール17 パートナーシップで目標を達成しよう(後編)

中編 からの続き  ターゲット17.13は「 政策協調や政策の首尾一貫性などを通じて、世界的なマクロ経済の安定を促進する 」だ。新型コロナウイルスの流行により経済に混乱が生じた時に、各国は金融緩和などで対応をした例などがある。一方で、戦争で経済的な混乱を引き起こす独裁国もありどう対処していくかは今後の課題だろう。  ターゲット17.14は「 持続可能な開発のための政策の一貫性を強化する 」だ。持続可能な開発は様々な分野が協調してこそ可能となる。    ターゲット17.15は「 貧困撲滅と持続可能な開発のための政策の確立・実施にあたっては、各国の政策空間及びリーダーシップを尊重する 」だ。開発途上国への支援でありがちなのは、支援を通じてその国を牛耳ってしまうことを目指したかのような例も散見される。過剰融資によって国中を債務漬けにする手法はしばしば問題視されている。  ターゲット17.16は「 全ての国々、特に開発途上国での持続可能な開発目標の達成を支援すべく、知識、専門的知見、技術及び資金源を動員、共有するマルチステークホルダー・パートナーシップによって補完しつつ、持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを強化する 」だ。環境問題や人権問題は国境を超えた問題であり、そうした問題に対処する能力に乏しい国には支援が必要だ。  ターゲット17.17は「 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する 」だ。日本ではネオリベラリストらの跋扈により、すっかり公務員は悪と無駄の象徴にされてしまったが、利害に縛られずやるべきことをやる公正さは営利企業には維持し難く、格差の是正の面でも重要な役目を果たしている。経済の主役である民間企業との協調は必要不可欠だが、公務員が営利企業の真似事をしても意味はない。  ターゲット17.18は「 後発開発途上国及び小島嶼開発途上国を含む開発途上国に対する能力構築支援を強化し、所得、性別、年齢、人種、民族、居住資格、障害、地理的位置及びその他各国事情に関連する特性別の質が高く、タイムリーかつ信頼性のある非集計型データの入手可能性を向上させる 」だ。  データは集計されてしまうと実態を反映しないこともある。例えば、とある草野球チームの平均年収は、チームにビル・ゲイツを一人を

SDGs ゴール17 パートナーシップで目標を達成しよう(中編)

前編 からの続き。  ターゲット17.6は「 科学技術イノベーション(STI)及びこれらへのアクセスに関する南北協力、南南協力及び地域的・国際的な三角協力を向上させる。また、国連レベルをはじめとする既存のメカニズム間の調整改善や、全世界的な技術促進メカニズムなどを通じて、相互に合意した条件において知識共有を進める 」だ。  新型コロナウイルス感染症は、科学の力で制圧されつつある。だが、一方で荒唐無稽なデマが科学技術を用いた道具により広がりもした。技術のみではなく正しい知識の世界的共有が必要だ。 ターゲット17.7は「 開発途上国に対し、譲許的・特恵的条件などの相互に合意した有利な条件の下で、環境に配慮した技術の開発、移転、普及及び拡散を促進する 」だ。開発途上国への技術移転が損であるかのように言われることもあるが、商売にもなる。搾取は論外だがお互いに良い条件での持続可能な開発が求められる。 ターゲット17.8は「 後発開発途上国のための技術バンク及び科学技術イノベーション能力構築メカニズムを完全運用させ、情報通信技術(ICT)をはじめとする実現技術の利用を強化する 」だ。後開発途上国の底上げは大切だが、何も分かっていない人達に詐欺師たちが襲いかからないように保護する必要もある。 ターゲット17.9は「 全ての持続可能な開発目標を実施するための国家計画を支援するべく、南北協力、南南協力及び三角協力などを通じて、開発途上国における効果的かつ的をしぼった能力構築の実施に対する国際的な支援を強化する 」だ。圧倒的な能力の格差の元では不公平が生じやすい。 ターゲット17.10は「 ドーハ・ラウンド(DDA)交渉の結果を含めたWTOの下での普遍的でルールに基づいた、差別的でない、公平な多角的貿易体制を促進する 」だ。  保護貿易を排し自由貿易を推進するのは、保護貿易化が第二次世界大戦の原因の一つとなったのを反省してのことでもある。しかし、結局戦争は起きた。侵略国家に対する経済制裁に関してはまだまだ考慮の余地ありそうだ。ただ、少なくとも搾取的な貿易は廃されるべきだろう。 ターゲット17.11は「 開発途上国による輸出を大幅に増加させ、特に2020年までに世界の輸出に占める後発開発途上国のシェアを倍増させる 」だ。現在の46の後開発途上国に2015年以降に後開発途上国を卒業した赤道

SDGs ゴール17 パートナーシップで目標を達成しよう(前編)

 SDGsゴール17は、 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化することだ。これまでのゴールを達成するために世界中が連携しましょうということになる。  そんなゴール17は17.1〜17.19の19のターゲットで構成されている。今回はターゲットも多く、内容も濃いので分割する。  ターゲット17.1は「 税及びその他の歳入を集める能力の向上のため、開発途上国への国際的な支援なども通じて、国内資源の動員を強化する 」だ。これは先進国が国内に重税を課して開発途上国を支援しようと言っているようにも見えるが、間接税の税率を上げれば消費は滞り景気も悪化して税収が減るのは明白であり、単に増税すれば良いのではないことも明白だ。外務省は原文の”   to improve domestic capacity for tax and other revenue collection ”の部分を「 課税及び徴税能力の向上のため 」と訳しているが、やや財務省の影が見える。ターゲット17.1の評価には国の予算のうち税金が占める割合も含まれており、国債の比率が高い日本の政府は国債発行を減らし課税を増やしたい意図もあるのだろうが、どうせインフレが進めば借金は目減りするのだから、じゃぶじゃぶ国債を発行すればいいのだ。景気の加熱を心配して増税するのを不景気の時にやる意味は無い。さて、日本の話はともかく、SDGsでは国家の連帯による世界規模の努力や私企業への世界的な統制は不可欠であり、基本的には大きな政府を目指している。これはネオリベラリストや陰謀論者がSDGsを嫌う理由の一つでもあるだろう。  ターゲット17.2は「 先進国は、開発途上国に対するODA(政府開発援助)をGNI(国民総所得)比0.7%に、後発開発途上国に対するODAをGNI比0.15~0.20%にするという目標を達成するとの多くの国によるコミットメントを含むODAに係るコミットメントを完全に実施する。ODA供与国が、少なくともGNI比0.20%のODAを後発開発途上国に供与するという目標の設定を検討することを奨励する 」だ。国民総所得(GNI)とは国内総生産(GDP)に国内外への資金の流れを加えたものとなる。だからGDPが高い国でも国外へ膨大な富の流出が起きていればGNIは下がるし、GDPが低くても国

SDGs ゴール16 平和と公正をすべての人に

 平和でなければ持続可能な開発などありはしない。公正でなければ「誰ひとり取り残さない」というSDGsの理念に反する。  さて、SDGsのゴール16は16.1〜16.10と16.a、16.bの12のターゲットよりなるが、これらは基本的には個人や犯罪組織ないしはテロ組織に関する暴力やそれにより乱される平和や不正をどうにかしようとする物だ。政治的にわざと曖昧にした可能性はあるが、大国の正規軍どうしが全面戦争をするなどという異常な事態はSDGs策定当時はあまり現実味のある話ではなかったのだろう。SDGsの期限である2030年を過ぎれば、この理念を継ぐ新たな国際的な目標が設定されるだろうが、その際に世界はどうなっているのか?戦争を現実的なリスクとして対応する何かしらの目標が設定されるのか気になるところだ。とはいえ、ゴール16の各ターゲットは戦争の有無に関わらず達成されるべきものだ。  ターゲット16.1は「暴力および暴力による死亡を減らす」だ。銃規制がザルのアメリカでは、多くの市民が毎日銃撃で死亡する。愚かなことだ。一方で、中国では国家が主体的に占領地の異民族を絶滅させようとしている。残念ながら世界は暴力に満ちているから、こういう目標が立てられるのだ。  ターゲット16.2は「子供に対する虐待や暴力・拷問をなくす」だ。子供は脆弱だ。親や法の保護がなければ、悪意を持った人間の暴力により支配される。加害する大人は厳しく処断すべきだし、子供用の保護施設の充実も図るべきだ。  ターゲット16.3は「司法への平等なアクセスを提供する」だ。権力者が市民の大量虐殺をやっても捕まらず、一般市民は突然捕まり裁判もなく殺されたり労働改造所に送られるような独裁国は存在してはならない。  ターゲット16.4は「 違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する 」だ。犯罪組織を舐めてはいけない。メキシコなどは内戦に等しい状況だ。ああなる前に芽は確実に摘んでおく必要がある。暴力団やテロ組織は撲滅あるのみだ。  ターゲット16.5は「汚職や贈賄を大幅に減少させる」だ。人間が凡夫である以上、完全に汚職や贈賄を防ぐことは出来ないが、権力構造が固定して絶対的である独裁国の方が汚職は生じやすい。なお、独裁国ではみんなが贈収賄をするから、トラブルがある

SDGs ゴール15 陸の豊かさも守ろう

 何度も言うが、森林を破壊してソーラーパネルを敷き詰めるなど言語道断な反SDGs行為だ。光害に気をつけつつ屋根や屋上につけるのが良かろう。  SDGsゴール15の陸の豊かさも守ろうは「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」事が目指されている。  そんなゴール15は15.1〜15.9と15.a〜15.cの12のターゲットから成り立っている。  ターゲット15.1は「陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する」だ。生態系は種々の生物が複雑に関係しあっており、なにか一つを守ればいいと言うわけではない。全体として保護に取り組むのが重要だ。  ターゲット15.2は「森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復させる」だ。木の成長には時間がかかる。木材が持続的に利用できるような森林管理が望まれる。  ターゲット15.3は「砂漠化に対処し、劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する」だ。中国の占領下にあるモンゴル南部の砂漠化など、独裁国による無謀な開発は世界的な迷惑だ。  ターゲット15.4は「持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う」だ。山野は木材の生産地としてだけではなく、水源となり防災にも役立ち、食品も採れる。人間が直接利用しないものも生態系の中で相互に影響しあっている。その保全は大切だ。  ターゲット15.5は「絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる」だ。絶滅した生物は元には戻らない。またそれが生態系の打撃ともなる。絶滅の防止は努めなければならない。  ターゲット15.6は「遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する」だ。開発途上国から得られた遺伝資源を安価で買いたたき一部の人間が莫大な利益を得てはならない。  ターゲット15.7は「保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅し、違法な野生生物製品の需要と供給の両面に対処する」だ。例えば、漢方薬の原料として絶滅危惧種のサイが殺されている。だが

SDGs ゴール14 海の豊かさを守ろう

 SDGsのゴール14は「海の豊かさを守ろう」だ。海洋に流出するマイクロプラスチックが問題視されている影響で、小売店のレジ袋が有料化されたり、ファストフード店などのプラスチック制のストローやスプーンなどが他の素材の変更されたりしたので印象に残っている人も多いだろう。マイクロプラスチックによる海洋汚染の最大の責任国は中国であり、生産量が多いこともさることながら、独裁国ならではの処理や管理の杜撰さも原因の一つだと言える。ただ、先進国でも厳密な管理は難しく、質の良い代替素材の開発が待たれる。  さてゴール14はもちろんマイクロプラスチック以外の問題も扱っている。SDGsは持続可能な開発目標なのだから、主たる目標は海洋資源の持続可能な利用であり、汚染の防止や多様性の維持はその手段となる。ゴール14は14.1〜14.7と14.a〜14.cの10のターゲットより構成されている。  ターゲット14.1は「海洋汚染を防止、削減する」だ。これは先述のマイクロプラスチックの他、種々の汚染物質や、富栄養化による被害も含まれる。  ターゲット14.2は「海岸・沿岸の生態系を回復させる」だ。海辺にお住まいの人なら磯焼けを見たことがあるかも知れない。まさしく海の砂漠化だ。磯焼け自体は必ずしも人為的な原因で起きるとは限らないが、わざわざ磯焼けや環境破壊を起こしそうな行為をする必要もない。陸上からの沿岸に流れる栄養が極度に増えたり減ったり、有害物質を放出したりしないように注意が必要だ。  ターゲット14.3は「海洋酸性化の影響を最小限化する」だ。海洋酸性化とは主に人類の活動による二酸化炭素の影響で海が酸性化することだ。薄い炭酸水になると思って貰えれば良い。アクアリウムを持っている方なら分かるだろうが、水のちょっとした変化で死んでしまう生物も多い。今のような過剰な二酸化炭素の放出は抑えるべきだ。  ターゲット14.4は「漁獲を規制し、不適切な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する」だ。一時的な利益を狙った水産物の乱獲は、結果として大希望な資源の減少を招き、生態系にも影響し更に被害が拡大しうる。回遊魚には国境は関係ないので、国際的な協力体制が求められる。  ターゲット14.5は「少なくとも沿岸域及び海域の10%を保全する」だ。生物多様性の観点から重要な海域の少なくとも10%を保護し資源の回復にあ

SDGs ゴール13 気候変動に具体的な対策を

 決して少なく無い人が、SDGsとは気候変動や環境問題のみを扱っていると信じている。確かに、地球の環境が人類の活動に比べて遥かに広大で、持続可能性なんて気にしないでもよければSDGsは誕生しなかったであろうから、環境問題はSDGsにおいて極めて重要ではある。気候変動に対して具体的な対策を求めるゴール13はSDGsの要と言っても良いが、そのために貧困問題や人権問題を放置して良い訳ではないのはこれまでのゴールで見てきた通りだ。  そんなゴール13はターゲット13.1〜13.3と13.a、13.bの5つで構成されている。  ターゲット13.1は「気候関連災害や自然災害に対する強靭性と適応能力を強化する」だ。気候変動を抑える努力は必要だが、既に気候変動は始まっており当面は確実に悪化する。今後の災害を予測しての建造物の強化や、災害時の避難場所や経路の策定、物資の貯蔵や復興計画など公的にも私的にも備える必要がある。  ターゲット13.2は「気候変動対策を国別の政策、戦略および計画に盛り込む」だ。防災関係のインフラ整備や法の整備、対応する人員の確保など、立法や行政に出来ることは多い。  ターゲット13.3は「気候変動対策に関する教育、啓発、人的能力および制度機能を改善する」だ。恐ろしいことに、日本の国会にも温暖化を否定する陰謀論者が入り込んでいる。これはとりも直さず、相当数の有権者も陰謀論を信じていることを意味する。アメリカに至っては前大統領から狂った陰謀論者だったのは記憶に新しい。教育は大切だ。  ターゲット13.aは「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の先進締約国によるコミットメントを実施し、緑の気候基金を本格始動させる」だ。緑の気候基金はは2015年に日本などが資金の拠出し始動しており現在も活動が続けられている。緑の気候基金は国連気候変動枠組条約に基づくもので、開発途上国の温室効果ガス削減と、気候変動の影響への対処を目的としている。  ターゲット13.bは「開発途上国における気候変動関連の効果的な計画策定や管理能力を向上するためのメカニズムを推進する」だ。このターゲットでは途上国の社会的弱者により働きかけるように言われている。今日の食べ物にも困る人達が環境問題を気にするのは難しいからだ。  ゴール13達成のためには、気候変動による災害を予測し対策を考え、その予防や環境の改

SDGs ゴール12 つくる責任、つかう責任

 ゴール12は、物の生産、消費、廃棄やリサイクルなどに関する諸問題で、12.1〜12.8と12.a〜12.cの11個のターゲットから構成されている。  ターゲット12.1は「持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組みを実施する」だ。10年計画枠組みとは2012年の国連持続可能な開発会議で採択された枠組みで、以下の6つのプログラムからなる。1.持続可能な公共調達、2.持続可能な消費と生産のための消費者情報、3.持続可能なツーリズム、4.持続可能な生活様式と教育、5.持続可能な建築・建設、6.持続可能な食料システム。このプログラムのために基金が設立されている。とにかく何が何でも持続可能であることが目指されている。  ターゲット12.2は「天然資源の持続可能な管理および効率的な利用を達成する」だ。天然資源の効率的使用と、廃棄物の処理や再利用が達成される必要がある。  ターゲット12.3は「世界全体の一人あたりの食料廃棄を半減させ、生産・バリューチェーンにおける食品ロスを減らす」だ。食品ロスを倫理的な同調圧力から達成しようとうする運動はよく見られるが、食品ロスは社会システムの問題である側面も多く、食品ロスが減るような仕組みの構築も必要だ。  ターゲット12.4は「化学物質や廃棄物の適正管理により、大気・水・土壌への流出を防ぐ」だ。有名なところではプラスチック類の環境への流出などは深刻な問題であり、管理の強化が各国で取り組まれている。  ターゲット12.5は「リデュース・リユース・リサイクル(3R)を通じて廃棄物の発生を減らす」だ。3Rは廃棄物の削減、再利用、再生利用のことだ。  ターゲット12.6は「企業に持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むように推奨する」だ。各企業の持続可能な開発目標に対する取り組みを可視化することで、相互監視が成り立ちやすくなり、他の企業の努力にタダ乗りしようとする会社は信用を失うことになる。  ターゲット12.7は「持続可能な公共調達を促進する」だ。ターゲット12.1でも出てきた持続可能な公共調達だが、公的に調達されるあらゆる物品は持続可能性に配慮されたものでなくてはならない。行政が国民に範を示すのは大切だ。  ターゲット12.8は「持続可能な開発および自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識をもつようにする」だ。昨今の陰謀論者の暗躍は

SDGs ゴール11 住み続けられるまちづくりを

 SDGsゴール11に定義づけられる住み続けられるまちとは、基本的には田舎の村落ではなく都市のことを指している。都市はそれ単体では中の住民の命を繋ぎ得ない。水も食料も大半の電力も都市の外からもって来なければならないし、人口が密になることにより生じる伝染病の拡がりやすさや、下水やごみ収集などの高度なシステムが機能しないと衛生すら保てない脆弱性がある。そんな都市部に世界人口の半数以上が集中しているのだから、その持続可能な開発を考えるのも当然必要なことだ。  ゴール11は11.1〜11.7と11.a〜11.cの10個のターゲットで構成されている。  ターゲット11.1は「住宅や基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する」だ。どんな街にも程度の差はあれ、いわゆるガラの悪い地域というものがある。それは行政と犯罪組織の癒着により政治的に作られたものも多いが、自然発生的に生じたものの多くは極度の貧困層が集まることによって形成される。貧困層でも定住を可能とし水道や電気などの基本的なサービスが受けられる状態にすれば、状況は改善しうる。  ターゲット11.2は「交通の安全性改善におり、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する」だ。高齢者や障害者などの交通弱者にも利用しやすい安全な交通手段が望まれる。人口の多い都市部では大量輸送が可能な公共交通機関でも採算に合う。公共交通機関は自動車よりも二酸化炭素排出量も少ない傾向にあり他のゴールにも寄与しうる。  ターゲット11.3は「参加型・包摂的・持続可能な人間居住計画・管理能力を強化する」だ。人口に対して利用可能な土地が狭い都市部においては、市民の居住に関する計画や管理がなければ混乱を招くことになる。  ターゲット11.4は「世界文化遺産・自然遺産を保護・保全する」だ。これはいわゆる国連のユネスコが認定する世界文化遺産や自然遺産の事だけではなく、地域の文化や自然遺産も守る必要がある。しかし、SDGsが世界的な流動性を促している以上、文化的なものに関しては変化が余儀なくされる。文化遺産とは建造物や美術品だけのことを指しているのではない。現地の文化に立脚した宗教や思想によって成り立っているからだ。  ターゲット11.5は「災害による死者数、被害者数、直接的経済損失を減らす」だ。都市の計画により天災の被害は軽減しうる。水害や火災や地震な

SDGs ゴールゴール10 人や国の不平等をなくそう

 時代劇などでよく見かけるシーンで、悪い剣術使いが町人などの弱者にワザと武器を持たせることで相手を斬り捨てる口実を得ようとするものがある。これはもちろん、敵対する相手に反撃の機会を平等に与えてあげようという善意では無く、相手を殺害するための体裁を整えただけだ。  社会的に圧倒的に強い側が、機会の平等をもってよしとするのも、悪い剣術使いと同じようなものだ。例えば大学受験の機会は平等であっても、貧乏人は生きるために割く時間が多いので学習の時間が少なく、金持ちは学校以外にも質の高い教育を受ける費用も時間もある。東大合格者の親の収入が高い傾向にあるのは有名な話だ。こうした構造的な不平等は国家間にも存在する。軍事的にも経済的にも強力な国が他国を事実上支配している時に、被占領地域の子供が占領軍兵士に投石したことをテロ攻撃だと認定し、近代兵器で地域住民を虐殺する光景はしばしば見られる。  SDGsのゴール10は人や国の不平等をなくそうとするもので、10.1〜10.7と10.a〜10.cの10のターゲットより成り立つ。  ターゲット10.1は「所得の低い人の所得成長率を上げる」だ。所得の格差は不平等の根源だ。各人の能力が十分に活用できないレベルの貧困は是正されなければならない。  ターゲット10.2は「すべての人の能力を強化し、社会・経済・政治への関わりを促進する」だ。日本では政治への関わりを持つことを何か悪いことのように言う風潮があるが、政治に無批判となれば、おかしな政党が政権を握ったり、政府の行動に歯止めが掛からなかったりと危険だ。各々が思うところを述べれば良い。そうして何度も失敗を重ねないから、社会の行方を自分のこととして考えなくなるのだ。世界中の人の能力を上げて労働力の流動化が進めば、政治を語ることを禁忌としている民族は滅びゆくことだろう。  ターゲット10.3は「機会均等を確保し、成果の不平等を是正する」だ。吉野家が日本国籍の漢人を就職試験を受けさせることなく門前払いにしていた事件などは記憶に新しいが、本人の資質とは無関係に人種、民族、性別、出身地などを基に行われる差別はまだまだ多い。  ターゲット10.4は「政策により、平等の拡大を達成する」だ。世の中には法廷の最低賃金すら払わぬ企業は山ほどあるがほぼ野放し状態だ。会社の都合で解雇しながら自己都合退職の形を強制される例も

SDGs ゴール9 産業と技術革新の基盤をつくろう

 SDGsのゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」とは概ねインフラや研究開発などの基盤の整備だ。社会に交通、電力、水道、通信などが整っていないとその地の産業は発展できない。産業に関する研究開発がおろそかではイノベーションは起きない。こうした基盤に投資しないと、社会や経済の発展はなく衰退は進む。研究費やインフラ整備などをケチって短期的に節約できても、それで浮いた金額より多くの被害が未来に生じるのは明白だ。  ゴール9は9.1〜9.5と9.a〜9.cの8つのターゲットより成り立つ。  ターゲット9.1は「経済発展と福祉を支える強靭なインフラを開発する」だ。文明は治水と共に始まったという俗説もある。インフラなきところに文明もあり得ない。  ターゲット9.2は「雇用とGDPに占める産業セクターの割合を増やす」だ。包括的で持続可能な工業化を進める事で付加価値を高める努力が必要となる。  ターゲット9.3は「小規模製造業等の、金融サービスや市場等へのアクセスを拡大する」だ。いくら良いものを作っても市場にアクセスできなければ売れないし、売れても金融サービスを利用しないと良いタイミングでの事業拡大は困難だ。  ターゲット9.4は「資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大により持続可能性を向上させる」だ。資源の利用効率向上は、自ずと環境にも良いし、持続可能性も向上する。例えば、同じ量の燃料を投入するなら熱効率の良いエンジンの方が仕事量が多く、同じ仕事量なら熱効率の良いエンジンの方が消費燃料が少ない。  ターゲット9.5は「産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる」だ。産業における生産効率も環境負荷の低減も、科学に基づくものでなくてはいけない。個人の感性に基づいて、当てずっぽうなことをしても無意味だ。  ターゲット9.a〜9.cは途上国への支援で、ターゲット9.aは「開発途上国への支援強化により、持続可能で強靭なインフラ開発を促進する」だ。ターゲット9.bは「開発途上国の技術開発・研究・イノベーションを支援する」だ。ターゲット9.cは「後発開発途上国における普遍的・安価なインターネット・アクセスを提供する」だ。開発途上国は伸び代も大きい。これらの国への投資は単なる支援にとどまらず、その経済発展により新たな市場を生み出すことにも

SDGs ゴール8 働きがいも経済成長も

 SDGsのゴール8は「働きがいも経済成長も」だ。働きがいというと日本ではすっかり詐欺とか搾取の代名詞となってしまったが、本来の働きがいとはそうした奴隷労働を否定した人間らしい労働のことであり、やりがいがあるからと低賃金長時間の労働を強いるのは働きがいがあるとは言わない。経済成長も未来永劫に続くかは疑問だが、格差の大きい現代の世界においては成長を必要とする人のほうが圧倒的に多く、当面の目標としては目指すべきであろう。  SDGsのゴール8は8.1〜8.10、8.aと8.bの12個のターゲットから構成される。  ターゲット8.1は「一人あたりの経済成長を持続させる」だ。独裁国などで見られる人海戦術に基づく国民に苦役を強いての成長には意味はない。  ターゲット8.2は「高い経済生産性を達成する」だ。労働も単に重労働を長時間すれば良い訳ではなく、技術革新や工夫に基づかなければ進歩はない。  ターゲット8.3は「開発重視型の政策を促進し、中小企業の設立や成長を推奨する」だ。特に大企業が無いか少ない国や地域においては、地元の中小企業を育て雇用や開発を持続的にするのは重要だ。また、それらが世界的につながって協働することもよりよい開発につながる。  ターゲット8.4は「資源効率を漸進的に改善させ、経済成長と環境悪化の分断を図る」だ。開発を進めても環境が悪化しないという状態を目指す。開発と環境破壊や公害は不可分のように思われてきたが、技術の進歩でそうでもなくなってきている。  ターゲット8.5は「雇用と働きがいがある仕事、同一労働同一賃金を達成する」だ。この場合の働きがいとは人間らしい労働であり、十分な給与と適正な労働時間と福利厚生とが守られる必要がある。また、性別や民族や障害の有無に関わらず、同じ仕事内容なら同一賃金で無いのは差別的である。  ターゲット8.6は「就学・就労・職業訓練を行っていない若者の割合を減らす」だ。いわゆるニートを減らすターゲットだ。彼らが貴族的な生活を送るにはそれなりに苦労している人がいるのを忘れてはいけない。だが彼らの中に本物の資産家や貴族がいればどんどん消費して経済を回してほしい。  ターゲット8.7は「強制労働・奴隷制・人身売買を終わらせ、児童労働を無くす」だ。実習生という名の奴隷、派遣社員、ブラック企業の正社員、一部の風俗産業の従業員など、事実上の

SDGs ゴール7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに

 SDGsは持続可能な開発目標だ。そのためには、電力などのエネルギーが安価で継続的に全人類に供給されるのは必要がある。同時に環境に悪影響を与えにくいソースでエネルギーを作り出す必要がある。ゴール7は「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」だ。環境テロリストらがSDGsを盾に環境のためなら停電に耐えるべきだなどと言うがコレは反SDGs的だ。  ところでSDGsが掲げるみんなに届けるべきエネルギーは電気以外に液化天然ガスなども含まれている。一見すると脱炭素の流れに反するようにも見えるが、液化天然ガスは石炭や石油に比べ発熱量当たりの二酸化炭素の排出が少ない。また、不純物が少ない液化天然ガスはNOxやSOxなどの汚染物質も少ない。世界では未だに木炭や薪や糞便などのススが多くエネルギー効率が悪い燃料が使われていることを考えると比較的クリーンなエネルギーソースだと言える。  一方で、発電の際にも二酸化炭素は発生するので電気=クリーンという訳でもない。直接的には二酸化炭素の排出がない原子力発電はある意味クリーンではあるが、大事故が起これば広範囲に汚染が広がりうるので、確率的には許容範囲内でも政治的には難しい立場にある。そこで再生可能エネルギーが注目される訳だが、これも森林を破壊して太陽光パネルを敷き詰めるなど本末転倒な事をする業者も多い。また技術的にもまだまだ改良が必要だが、それは推進しつつ改良を図るしかない。ともあれ当面は原子力発電の割合を増やしつつ、他のクリーンな発電方法を改良・開発するのが現実的だろう。  さて、ゴール7のターゲットは7.1〜7.3、7.a、7.bの5つから成り立つ。  ターゲット7.1は「エネルギーアクセスへの普遍的なアクセスを確保する」だ。電力供給が不安定でしばしば停電になるようでは、経済の安定と持続可能な開発は不可能だ。また、安定的な電力供給も安価で無ければ、普遍的とはいえない。日常生活レベルに至るまでの節電を訴える時点でエネルギー行政は失敗している。  ターゲット7.2は「再生可能エネルギーの割合を増やす」だ。このターゲットは大切だが、森林を切り開き太陽光パネルを敷き詰めるなど愚の骨頂だ。それによる二酸化炭素の増加の方が問題だと言えよう。太陽光パネルは、ビルの屋上や荒野などの使われていない場所でこそ真価を発揮するものだ。  ターゲット7.3は「エネル

SDGs ゴール6 安全な水とトイレを世界中に

 SDGsゴール6の安全な水とトイレに関しては、日本はほぼ問題ない。日本の下水道普及率に関しては8割ほどしか無いものの残りの2割も浄化槽などにより管理されており別に垂れ流されている訳ではない。だが一方で自然派などと呼ばれる狂った集団が、わざわざ消毒されていない水を飲み、処理が不十分な糞尿を肥料として撒き散らすなどの不衛生で危険な行為をしており、ごく一部とはいえ日本にも危険な地域は存在する。  ゴール6はターゲット6.1〜6.6と6.a,6.bの8つがある。  ターゲット6.1は「安全・安価な飲料水の普遍的・衡平なアクセスを達成する」だ。途上国に行ったことがある人なら分かるだろうが、水は安全ではない。欧米でも安全な水は安価とは言い難い。日本人は安全で安価な水のありがたさを知るべきだ。一部の自治体では、上水道の管理が無駄だとかと言って一般企業に施設と権利を売却しようとしているが、利益を追求して安全や職員の健康を無視するような企業に水道管理を任せてはならない。  ターゲット6.2は「下水・衛生設備へのアクセスにより、野外での排泄をなくす」だ。下水や衛生設備の無い国や地域は、申し訳ないが、本当に汚く危険だ。不衛生な環境では人は簡単に死んでしまう。ゴール3にも関連して可能な限りの支援が必要だ。  ターゲット6.3は「汚染の減少や有害物質の投棄抑制により水質を改善する」だ。河川などへ処理していない糞尿を垂れ流すことや、工場からの有害物質の廃棄は、その下流で水を利用する人々や河川の生態系に深刻な被害をもたらす。しっかりとした管理が必要だ。  ターゲット6.4は「水不足に対処し、水不足に悩む人たちの数を大幅に減らす」だ。人間が利用できる水には限りがあるが、浄化技術の向上などで効率化は図れる。また、比較的水資源の豊かな先進国では人口増加に歯止めがかかっているが、水も食料も不足しがちな地域で起きる人口爆発は更なる悲劇を招く恐れがある。  ターゲット6.5は「国境を越えた協力を含む統合的な水資源管理を実施する」だ。これの日本ではなじみが薄いが、陸で国境を接する国では水資源管理は重大な問題だ。中国は東南アジアに向かうメコン河の流れを人為的にコントロールし政治的圧力としても利用している。水源地の確保には戦略的な意味もある。これは中国がチベットへ侵略した理由の一つでもあると言われる。このような

SDGs ゴール5 ジェンダー平等を実現しよう

 日本の評価が著しく低いのがSDGsゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」だ。ジェンダー平等の話をする時、フェミニスト過激派と極右が激しい戦いを繰り広げることが多いが、極端な話ばかりすると問題の本質が見えなくなる。彼らはともに反SDGs的存在だ。以下のゴール5のターゲットを知ればその理由は自明だろう。  ゴール5はターゲット5.1〜5.6と5.a〜5.cの9つで構成されている。  今回はターゲット5.1〜5.3をまとめて見てみよう。ターゲット5.1は「女性に対する差別をなくす」だ。ターゲット5.2は「女性に対する暴力をなくす」だ。ターゲット5.3は「女性に対する有害な慣行をなくす」だ。この3つのターゲットは全て「女性に対する〜をなくす」の形となっている。別に女性に対してで無くても、差別も暴力も有害な慣行もなくすべきだが、わざわざ女性に対するという文言が必要であるのは、実際に女性がこれらの被害者である事が有意に多いからに他ならない。ミソジニストらはこうした事実自体を否定して、あたかも女性の方が男性達を差別し迫害しているなどと訴えるが、その大半は極端な例を一般化する詭弁に過ぎない。  ターゲット5.4は「無報酬の育児・介護・家事労働を認識、評価する」だ。単純に見れば専業主婦の地位向上に役立ちそうなこのターゲットだが、現代において専業主婦はまるでサンドバッグのような差別を受けている。一部フェミニスト過激派は専業主婦を男に媚びているとして蛇蝎のごとくに嫌うし、ウヨクも専業主婦を嫌う。ウヨク的には伝統的な専業主婦という女性の立場を支持すべきではと疑問に思うのだがまるで穀潰しのように叩く。彼らにとっては伝統を守るより女性を叩く事に興味があるようだ。思想的に保守でも右翼でもない。ターゲット5.4は共働きでもそうでなくても性別がどちらでも育児や家事や介護のための労働を評価すべきだというものだが、専業主婦や主夫への差別はやめて欲しいものだ。ちなみに専業主婦はSDGsのアクションを行っている率が勤労女性より高いという。決して一部の人が言うような極悪非道な人達ではないのは明らかだ。  ターゲット5.5は「政治・経済・公共分野での意思決定において、女性の参画と平等なリーダーシップの機会を確保する」だ。これは明らかに他の先進国に比べて日本は劣っている。現状を見るに自然な改善はありえないので、

SDGs ゴール4 質の高い教育をみんなに

 SDGsのゴール4は「質の高い教育をみんなに」だ。現代社会において、教育を受けているか否かは生活力に直結する。教育格差による不平等を防ぐためにも、みんなに質の高い教育を施す必要がある。  SDGsのゴール4は、4.1〜4.7と4.a〜4.cの10個のターゲットから成り立っている。  ターゲット4.1は「無償・公正・質の高い初等中等教育を修了できるようにする」だ。日本の義務教育などがこれにあたる。現在、世界で9割ほどはの子供は初等教育を受けられているが、子供も労働力として利用するようなレベルの途上国では教育制度自体はあっても利用しない人も多く、また、一部の特殊な地域では女児の教育が事実上禁止されていたりもする。また、世界的に有償の方が質の高い教育を受けられるが、公正さを保つためには公的な教員の待遇と質の改善が望まれる。  ターゲット4.2は「乳幼児の発達ケアと就学前教育にアクセスできるようにする」だ。一部の福祉国家を除けば、乳幼児のケアにかかる費用は高額であり就学前教育に関する貧富の差は深刻だ。日本は比較的安価でこれらへのアクセスは可能だが、人手不足から保育園に入りにくいという社会問題が存在する。これは職員の待遇が悪いために人手が不足するのも原因の一つだ。当然だが給与が高いほうが質の良い人材も集まりやすいし、人手が足りず忙殺されれば研鑽も十分には出来ない。  ターゲット4.3は「高等教育に平等にアクセスできるようにする」だ。日本の高等教育には男女差別が歴然と存在する。既に是正されたが数年前に露見した日本の複数の医科大で女性受験者を不当に不合格にしていた犯罪的案件は記憶に新しい。また、未だに親から進学を禁止されたり、進学しても地元の大学に限定を受けるという女性も多い。成人年齢が18歳に引き下げになったこともあり、そうした事情で進学を断念する女性を減らすように、返済不要の奨学金制度の充実が期待される。  ターゲット4.4は「働く技能を備えた若者と成人の割合を増やす」だ。社会人も日々学習や研鑽に励まねば進歩はない。単純作業のみさせて給与をなるべく据え置こうとする企業や社会に明日はない。  ターゲット4.5は「教育における男女格差をなくし、脆弱層が教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする」だ。教育における男女差別以外にも、貧乏人や社会的に差別を受けている人達は教育や職

SDGs ゴール3 全ての人に健康と福祉を

 SDGsのゴール3は「全ての人に健康と福祉を」だ。人々が健康で無ければ持続可能も何もあった物ではない。SDGsのゴール1〜3、貧困を無くし、飢餓を無くし、健康であることは、全ての基本だと言っても過言ではない。貧富の差が極大な世界で、大多数の人が貧困と飢餓と不健康に喘ぎ、そこから搾取する少数が持続可能な豊かな生活を送ってもSDGsは失敗だ。  さて、SDGsのゴール3には3.1〜3.9と3.a〜3.dの13個のターゲットがある。順に見ていこう。  ターゲット3.1は「妊産婦の死亡率を削減する」だ。日本は妊産婦の死亡率が世界でも有数に低いがそれでも、10万人あたり3人程度は死ぬ。最も妊産婦が死ぬ国では10万人あたり1000人程死ぬ。妊娠・出産は割と命懸けだ。ターゲット3.1では2030年までに妊産婦の死亡率を10万人あたり70人未満にするよう目指されている。  ターゲット3.2は「新生児・5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する」だ。このターゲットでは新生児の死亡数を1000人中12件未満、5歳未満児の死亡率を1000人中25件未満にすることが目指されている。日本では新生児の死亡率は1000分の1程で5歳未満児の死亡率は1000分の2.5程であり、改善点はあるにしても世界的に見れば優秀であり、他国への医療支援・指導が望まれる。  ターゲット3.3は「重篤な伝染病を根絶し、その他の感染症に対処する」だ。このターゲットが策定された時に、新型コロナウイルス感染症が流行するとは誰も思わなかっただろうが、社会に甚大な被害をもたらす伝染病への対策はいつでも重要だ。  ターゲット3.4は「非感染性疾患による若年死亡率を減少させ、精神保健・福祉を促進する」だ。これは一般の疾病対策はもちろん、自死や他殺を防ぐ狙いもある。  ターゲット3.5は「薬物やアルコール等の乱用防止・治療を強化する」だ。依存性のあるアルコールや違法薬物などから人々を守る必要がある。伝統宗教が概ね飲酒を禁じているのは古来からアルコールによる被害が甚大であった事を物語っている。  ターゲット3.6は「道路交通事故の死傷者を半減させる」だ。日本では自動車の安全技術の改良や医療の発展により交通事故の死者は減ってきているが、今でも無謀運転や飲酒運転による悲惨な事故は見られる。機械制御だらけの安全運転はつまらないとの意見もあるが

SDGs ゴール2 飢餓をゼロに

  空腹は良くない。じゃりン子チエのおばあはんのセリフで 「 ひもじい、寒い、 もう死にたい、不幸はこの順番で来ますのや」というものがある。ひもじいのは不幸の始まりだ。  そんな空腹だが世界の約1/4が食糧不安の状態にあり、世界人口の約1割の8億人が飢餓状態だと言われている。そんな飢餓を無くす目標がSDGsのゴール2「飢餓をゼロに」だ。  ゴール1と同様にゴール2以下も複数のターゲットで構成されている。ターゲット2.1〜2.5がゴールの中身で、2.a〜2.cがゴールを達成する手段となる。  ターゲット2.1は「飢餓を撲滅し、安全で栄養のある食事を得られるようにする」だ。実にわかりやすいターゲットだ。食糧生産を増やし、ロスを減らすのは喫緊の課題だろう。科学技術の発達でカビ毒などの混入が少ない安全で美味しい農産物が効率よく育てられるようになった。だが、嘆かわしいことに世の中には自然派などと呼ばれる農薬類を忌避する狂信的集団がいる。彼らは先進国においても不潔で生産効率が悪い農産物を生産している。彼らの嗜好はまだ良いとしても、可哀想なことにその子供らもそうしたおぞましい物を食べさせられている。彼らは彼らが使用する農地で本来なら生産できたハズの安全で生産効率の高い農産物が出来る機会を奪っており間接的に飢餓に苦しむ人を更に苦しめていると言える。  ターゲット2.2は「栄養不良をなくし、妊婦や高齢者等の栄養ニーズに対処する」だ。等には子供らも含まれる。特に乳幼児の栄養状態は生存率やその後の発育にも影響を与える。ガーナで味の素社が官民連携事業として子供らにサプリメントを販売しているのも対策の一つだ。やはり科学技術を使った支援は効率が良い。  ターゲット2.3は「小規模食糧生産者の農業生産性と所得を倍増させる」だ。持続可能性はSDGsの要だ。飢餓ゼロを目指すのだから生産者の安定が重要なのは言うまでもない。  ターゲット2.4は「持続可能な食糧生産システムを確保し、強靭な農業を実践する」だ。これは農業技術だけでは改善しない。地球温暖化による影響も深刻だ。他のゴールと合わせて達成する必要がある。    ターゲット2.5は「食料生産に関わる動植物の遺伝的多様性を維持し、遺伝資源等へのアクセスと、得られる利益を公正・衡平に配分する」だ。先日から続くロシア軍のウクライナ侵略でハルキウ(ハリコフ

SDGs ゴール1貧困をなくそう

 SDGsのゴール1は「貧困をなくそう」だ。一部の人達はSDGsを根拠にして、環境保全の為に人類は貧困を甘受せよと言うが、彼らの言説は初っ端から矛盾している。だいたい、貧困でもいいなどと言う人が実際に貧困を経験した可能性は限りなく低い。貧困がいかに惨めな状況か理解していればそんなことは言えない。貧困な状態では人はその能力を十分に活かせない。これはSDGsのゴール2,3,4である「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」とも密接に関係している。貧困であれば、飢えて不健康で十分な教育が受けられずに貧困が再生産されるのだ。  だから貧困は根絶されねばならない。このゴール1は以下の7つのターゲット(1.1〜1.5と1.a、1.b)により構成されている。  1.1は「極度の貧困を終わらせる」というものだ。2011年の国際価格で1.9米ドル以下で1日過ごさなければならない人達が極度の貧困とされている。彼らを貧困から脱却させ、それを持続的にするためには貧困層を対象としたビジネスの構築も必要となる。いわゆるBOPビジネスと呼ばれるものは従来型の貧者への寄付や支援とは違い、貧困層を購買してもらうターゲットとして見ている。搾取にならないように、貧困層のためになる商品やサービスを提供することで自立を促す狙いもある。逆に、膨大な支援物資で地域が埋まれば、現地に仕事が生まれなくなる。支援される側もする側も損をしない枠組みであることが重要だ。  1.2は「(相対的にも)貧困状態にある人の割合を半減させる」というものだ。これは1.1のような絶対的な貧困ではなくても、各国や地域での収入の中央値の半分以下の人達などの相対的な貧困にも対応する必要があることを説いている。相対的貧困は少数の高所得層を多数の貧困層が支える構図で増加する。雇用側がみんなを最低賃金でこき使おうと思っていては達成できない目標だ。  1.3は「貧困層・脆弱層の人々を保護する」だ。これは社会保障制度の充実や、企業の年金や保険や労災対策なども含まれる。  1.4は「基礎的サービスへのアクセス、財産の所有・管理の権利、金融サービスや経済的資源の平等な権利を確保する」だ。ここで言う基礎的サービスとは、上下水道や電力や公共サービスなどを意味する。  1.5は「貧困層・脆弱層の人々の強靭性を構築する」だ。例えば、災

SDGs悪玉論を憂う

 SDGsの評判が悪い。これ見よがしに虹色の輪のバッジをひけらかす意識高い系の人が的外れな事を言ったり、著しくは明らかな環境詐欺目的で日本中を跋扈しているのだからさもありなんという感じだ。だが、SDGs自体の理念や方針は決して間違ったものではなく、むしろ推進しないと人類が危ない。  世間ではすっかりSDGsと言うだけで小馬鹿にする風潮が出来上がりつつあり非常によろしくない。また、SDGsを推進する側の人間も理解が十分ではなく、他人のSDGsの取り組みに対してそんなのはSDGsではないと誤った指摘をする人までいる。SDGsには17のゴールと169のターゲットがありそれぞれが関連しあっているのだが、実際のところこれらを網羅的に理解している人はごくわずかだ。SDGsの一部をだけを取り上げて他を排撃するのは誰ひとり取り残さないとするSDGsの理念に反する。  そもそもSDGsとはなんぞやということ振り返ると、SDGsとは持続可能な開発目標の意味で、2016年から2030年まで国連加盟国193ヶ国が目指す国際目標だ。持続可能な開発とは環境と人権(社会的包摂)を守りつつ行われる経済開発のことだ。その際に誰かが犠牲になることなく誰ひとり取り残さない事を目指している。タイムテーブル的には既に中盤に差し掛かっているSDGsだが、達成には程遠い現状だ。  SDGsのこうした理念は菩薩行にも似る。仏子たるもの協力を惜しむべきでは無い。そこで明日から暫くはこの問題を取り上げていきたいと思う。 続く