SDGs ゴール11 住み続けられるまちづくりを

 SDGsゴール11に定義づけられる住み続けられるまちとは、基本的には田舎の村落ではなく都市のことを指している。都市はそれ単体では中の住民の命を繋ぎ得ない。水も食料も大半の電力も都市の外からもって来なければならないし、人口が密になることにより生じる伝染病の拡がりやすさや、下水やごみ収集などの高度なシステムが機能しないと衛生すら保てない脆弱性がある。そんな都市部に世界人口の半数以上が集中しているのだから、その持続可能な開発を考えるのも当然必要なことだ。

 ゴール11は11.1〜11.7と11.a〜11.cの10個のターゲットで構成されている。

 ターゲット11.1は「住宅や基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する」だ。どんな街にも程度の差はあれ、いわゆるガラの悪い地域というものがある。それは行政と犯罪組織の癒着により政治的に作られたものも多いが、自然発生的に生じたものの多くは極度の貧困層が集まることによって形成される。貧困層でも定住を可能とし水道や電気などの基本的なサービスが受けられる状態にすれば、状況は改善しうる。

 ターゲット11.2は「交通の安全性改善におり、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する」だ。高齢者や障害者などの交通弱者にも利用しやすい安全な交通手段が望まれる。人口の多い都市部では大量輸送が可能な公共交通機関でも採算に合う。公共交通機関は自動車よりも二酸化炭素排出量も少ない傾向にあり他のゴールにも寄与しうる。

 ターゲット11.3は「参加型・包摂的・持続可能な人間居住計画・管理能力を強化する」だ。人口に対して利用可能な土地が狭い都市部においては、市民の居住に関する計画や管理がなければ混乱を招くことになる。

 ターゲット11.4は「世界文化遺産・自然遺産を保護・保全する」だ。これはいわゆる国連のユネスコが認定する世界文化遺産や自然遺産の事だけではなく、地域の文化や自然遺産も守る必要がある。しかし、SDGsが世界的な流動性を促している以上、文化的なものに関しては変化が余儀なくされる。文化遺産とは建造物や美術品だけのことを指しているのではない。現地の文化に立脚した宗教や思想によって成り立っているからだ。

 ターゲット11.5は「災害による死者数、被害者数、直接的経済損失を減らす」だ。都市の計画により天災の被害は軽減しうる。水害や火災や地震など、何の対策もされていなければ人口の密集している都市では甚大な被害が発生する。

 ターゲット11.6は「大気や廃棄物を管理し、都市の環境への悪影響を減らす」だ。今や北京などの中国の大都市の大気汚染は災害級と言っても過言ではなく、近隣諸国にも健康被害をもたらしている。国民の人権を一顧だにしない独裁国に公害のコントロールは難しい。

 ターゲット11.7は「緑地や公共スペースへのアクセスを提供する」だ。都市部においても自然や公園などのスペースを確保することは、住民の生活の質の改善に寄与する。また、こうした公園は非常時において多目的な活用も可能となる。

 ターゲット11.aは「都市部、都市周辺部、農村部間の良好なつながりを支援する」だ。都市部は単独ではその住民を維持できない。田舎からの水や食料の供給が必要であり、良好な関係を維持するのは必要だ。だが、都市部に教育や経済の拠点が集中していることから田舎から人材は流出していく。田舎から出ていった人もそのまま都市の住民となることが多いので、田舎の力は弱まっていく。また、都市部は田舎へ産業廃棄物や原発などのリスクを伴う施設を押し付ける。人口密集地に危険性のある施設は作られないのは当然といえば当然だが、往々にして都市の住民はこうした施設に対し田舎に払われる補助金をさして、田舎者を自分達の税金をむしり取る厄介者などと言いがちであり、都市が田舎からの収奪により成り立っている事実を忘れている。国防に関しても国境から遠い首都などの大都市では非現実的な軍縮論を唱える人が多く、日々脅威にさらされている国境付近に居住する田舎者との緊張感の乖離が著しい。

 ターゲット11.bは「総合的な災害リスク管理を策定し、実施する」だ。日本では地震や火災や水害や戦災を想定した対策は各自治体で練られているが、その質にはばらつきも大きい。

 ターゲット11.cは「後発開発途上国における持続可能で強靭な建造物の整備を支援する」だ。建造物はただの箱では無い。行政や経済の拠点となり、物資を安全に貯め、人々の避難施設にもなりうる。

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