SDGs ゴール8 働きがいも経済成長も

 SDGsのゴール8は「働きがいも経済成長も」だ。働きがいというと日本ではすっかり詐欺とか搾取の代名詞となってしまったが、本来の働きがいとはそうした奴隷労働を否定した人間らしい労働のことであり、やりがいがあるからと低賃金長時間の労働を強いるのは働きがいがあるとは言わない。経済成長も未来永劫に続くかは疑問だが、格差の大きい現代の世界においては成長を必要とする人のほうが圧倒的に多く、当面の目標としては目指すべきであろう。

 SDGsのゴール8は8.1〜8.10、8.aと8.bの12個のターゲットから構成される。

 ターゲット8.1は「一人あたりの経済成長を持続させる」だ。独裁国などで見られる人海戦術に基づく国民に苦役を強いての成長には意味はない。

 ターゲット8.2は「高い経済生産性を達成する」だ。労働も単に重労働を長時間すれば良い訳ではなく、技術革新や工夫に基づかなければ進歩はない。

 ターゲット8.3は「開発重視型の政策を促進し、中小企業の設立や成長を推奨する」だ。特に大企業が無いか少ない国や地域においては、地元の中小企業を育て雇用や開発を持続的にするのは重要だ。また、それらが世界的につながって協働することもよりよい開発につながる。

 ターゲット8.4は「資源効率を漸進的に改善させ、経済成長と環境悪化の分断を図る」だ。開発を進めても環境が悪化しないという状態を目指す。開発と環境破壊や公害は不可分のように思われてきたが、技術の進歩でそうでもなくなってきている。

 ターゲット8.5は「雇用と働きがいがある仕事、同一労働同一賃金を達成する」だ。この場合の働きがいとは人間らしい労働であり、十分な給与と適正な労働時間と福利厚生とが守られる必要がある。また、性別や民族や障害の有無に関わらず、同じ仕事内容なら同一賃金で無いのは差別的である。

 ターゲット8.6は「就学・就労・職業訓練を行っていない若者の割合を減らす」だ。いわゆるニートを減らすターゲットだ。彼らが貴族的な生活を送るにはそれなりに苦労している人がいるのを忘れてはいけない。だが彼らの中に本物の資産家や貴族がいればどんどん消費して経済を回してほしい。

 ターゲット8.7は「強制労働・奴隷制・人身売買を終わらせ、児童労働を無くす」だ。実習生という名の奴隷、派遣社員、ブラック企業の正社員、一部の風俗産業の従業員など、事実上の奴隷は日本でも多い。

 ターゲット8.8は「全ての労働者の権利を保護し、安全・安心に働けるようにする」だ。移民労働者など被差別的な扱いを受けることが多い人達の権利も保護する必要がある。密入国者などによる違法労働の場合でも、逮捕を恐れる密入国者を奴隷化することは許されない。密入国者や違法に雇用した企業を罰するのとは別の問題だ。

 ターゲット8.9は「持続可能な観光業を促進する」だ。大量の観光客が押し寄せるいわゆる観光公害によって、観光地の価値そのものが破壊されないようにする必要がある。また、観光地を素通りされるだけでは地域の経済は潤わず、その価値を維持するのも困難となるので、観光が消費や雇用につながるようにする必要もある。

 ターゲット8.10は「銀行取引・保険・金融サービスへのアクセスを促進・拡大する」だ。大企業が金融を利用しておこなう開発は、個人が手持ちの資金だけで行う仕事と比べ規模も効率も圧倒的に有利であり、弱者はいつまでも弱いままとなる。マイクロファイナンスなどの貧者からの相談やアドバイスも含めた金融や保険業はこの格差を埋めるのに役立つが、運用は高度な知識と倫理性が要求される。残念な事にマイクロファイナンスを騙る単なる高利貸しも散見される。

 ターゲット8.aは「開発途上国への貿易のための援助を拡大する」だ。開発途上国にはそもそもの貿易の枠組みや施設も整えられてないことが多く支援が必要だ。

 ターゲット8.bは「若年雇用のための世界的戦略とILOの世界協定を実施する」だ。これは2009年に起きた金融危機で解雇された若年者を救うために、2020年までにという既に過ぎている期限で目指されていた。ILOらによる国際モニタリングや指導は雇用の回復に寄与したと言われる。

 SDGs全体の期限は2030年までだが、ターゲット8.bのようにより短い期限の個別のターゲットは他にもある。ターゲット8.6も期限は2020年までだったが達成されたとは言い難い。また8.7中の児童労働の撲滅は2025年に期限を迎えるが、これの達成も難しそうだ。だが、期限を過ぎてもその理念は継続されるべきだ。

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