SDGs ゴールゴール10 人や国の不平等をなくそう

 時代劇などでよく見かけるシーンで、悪い剣術使いが町人などの弱者にワザと武器を持たせることで相手を斬り捨てる口実を得ようとするものがある。これはもちろん、敵対する相手に反撃の機会を平等に与えてあげようという善意では無く、相手を殺害するための体裁を整えただけだ。

 社会的に圧倒的に強い側が、機会の平等をもってよしとするのも、悪い剣術使いと同じようなものだ。例えば大学受験の機会は平等であっても、貧乏人は生きるために割く時間が多いので学習の時間が少なく、金持ちは学校以外にも質の高い教育を受ける費用も時間もある。東大合格者の親の収入が高い傾向にあるのは有名な話だ。こうした構造的な不平等は国家間にも存在する。軍事的にも経済的にも強力な国が他国を事実上支配している時に、被占領地域の子供が占領軍兵士に投石したことをテロ攻撃だと認定し、近代兵器で地域住民を虐殺する光景はしばしば見られる。

 SDGsのゴール10は人や国の不平等をなくそうとするもので、10.1〜10.7と10.a〜10.cの10のターゲットより成り立つ。

 ターゲット10.1は「所得の低い人の所得成長率を上げる」だ。所得の格差は不平等の根源だ。各人の能力が十分に活用できないレベルの貧困は是正されなければならない。

 ターゲット10.2は「すべての人の能力を強化し、社会・経済・政治への関わりを促進する」だ。日本では政治への関わりを持つことを何か悪いことのように言う風潮があるが、政治に無批判となれば、おかしな政党が政権を握ったり、政府の行動に歯止めが掛からなかったりと危険だ。各々が思うところを述べれば良い。そうして何度も失敗を重ねないから、社会の行方を自分のこととして考えなくなるのだ。世界中の人の能力を上げて労働力の流動化が進めば、政治を語ることを禁忌としている民族は滅びゆくことだろう。

 ターゲット10.3は「機会均等を確保し、成果の不平等を是正する」だ。吉野家が日本国籍の漢人を就職試験を受けさせることなく門前払いにしていた事件などは記憶に新しいが、本人の資質とは無関係に人種、民族、性別、出身地などを基に行われる差別はまだまだ多い。

 ターゲット10.4は「政策により、平等の拡大を達成する」だ。世の中には法廷の最低賃金すら払わぬ企業は山ほどあるがほぼ野放し状態だ。会社の都合で解雇しながら自己都合退職の形を強制される例も後をたたない。法はあっても行政にそれを守る意思がなければ同じことだ。

 ターゲット10.5は「世界金融市場と金融機関に対する規制と監視を強化する」だ。金融機関は法で規制され監視されていないと、犯罪組織の資金だろうがテロリストの資金だろうが扱う。彼らは儲けの為には合法な事は何でもするし、違法でも露見しない自信があればやる。信用してはならない。

 ターゲット10.6は「開発途上国の参加と発言力の拡大により正当な国際経済・金融制度を実現する」だ。お金は基本的にあるところに集まり、無いところには貯まらない。開発途上国の発言力を高めねば、開発途上国が貧困から脱するのはなかなかに難しい。

 ターゲット10.7は「秩序の取れた、安全で規則的、責任ある移住や流動性を促進する」だ。日本政府は技能実習生という名の非人道的な奴隷労働を促進している。諸外国でも戦災などによる難民が同様な目にあう場合もある。

 SDGsでは世界的な労働力の流動性を促進している。開発途上国の底上げに熱心なのも、その目的のためでもあるだろう。ターゲット10.a〜10.cはこの観点で見ると分かりやすい。ターゲット10.aは「開発途上国に対して貿易面で特別かつ異なる待遇の原則を実施する」だ。途上国には保護貿易を認めるということだ。ターゲット10.bは「開発途上国等のニーズの大きい国へ、ODA等の資金を流入させる」だ。途上国へ資金を流入させその開発を促すのは、国際的に通用する労働力を増やし流動性を高めるのには必要だ。ターゲット10.cは「移民労働者の送金コストを下げる」だ。出稼ぎに来た移民らが母国へ送金しやすくするためのものだ。

 労働力の流動性が究極的に高まれば、地域の独自文化が破壊される恐れがある。これらの保護は次のゴール11で軽く触れられてはいるが、全体としては弱い。

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