SDGs ゴール3 全ての人に健康と福祉を

 SDGsのゴール3は「全ての人に健康と福祉を」だ。人々が健康で無ければ持続可能も何もあった物ではない。SDGsのゴール1〜3、貧困を無くし、飢餓を無くし、健康であることは、全ての基本だと言っても過言ではない。貧富の差が極大な世界で、大多数の人が貧困と飢餓と不健康に喘ぎ、そこから搾取する少数が持続可能な豊かな生活を送ってもSDGsは失敗だ。

 さて、SDGsのゴール3には3.1〜3.9と3.a〜3.dの13個のターゲットがある。順に見ていこう。

 ターゲット3.1は「妊産婦の死亡率を削減する」だ。日本は妊産婦の死亡率が世界でも有数に低いがそれでも、10万人あたり3人程度は死ぬ。最も妊産婦が死ぬ国では10万人あたり1000人程死ぬ。妊娠・出産は割と命懸けだ。ターゲット3.1では2030年までに妊産婦の死亡率を10万人あたり70人未満にするよう目指されている。

 ターゲット3.2は「新生児・5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する」だ。このターゲットでは新生児の死亡数を1000人中12件未満、5歳未満児の死亡率を1000人中25件未満にすることが目指されている。日本では新生児の死亡率は1000分の1程で5歳未満児の死亡率は1000分の2.5程であり、改善点はあるにしても世界的に見れば優秀であり、他国への医療支援・指導が望まれる。

 ターゲット3.3は「重篤な伝染病を根絶し、その他の感染症に対処する」だ。このターゲットが策定された時に、新型コロナウイルス感染症が流行するとは誰も思わなかっただろうが、社会に甚大な被害をもたらす伝染病への対策はいつでも重要だ。

 ターゲット3.4は「非感染性疾患による若年死亡率を減少させ、精神保健・福祉を促進する」だ。これは一般の疾病対策はもちろん、自死や他殺を防ぐ狙いもある。

 ターゲット3.5は「薬物やアルコール等の乱用防止・治療を強化する」だ。依存性のあるアルコールや違法薬物などから人々を守る必要がある。伝統宗教が概ね飲酒を禁じているのは古来からアルコールによる被害が甚大であった事を物語っている。

 ターゲット3.6は「道路交通事故の死傷者を半減させる」だ。日本では自動車の安全技術の改良や医療の発展により交通事故の死者は減ってきているが、今でも無謀運転や飲酒運転による悲惨な事故は見られる。機械制御だらけの安全運転はつまらないとの意見もあるが、楽しむために無関係の人を殺したり怪我を負わす可能性のある行為は許容出来まい。楽しい運転はサーキットを借りて行うしか無いだろう。

 ターゲット3.7は「性と生殖に関する保険サービスを利用できるようにする」だ。特に10〜14歳の妊娠・出産を阻むよう求められている。女児が妊娠すると母子ともに危険であり、また、この年齢の妊娠はほぼ本人が望んだ物でなく強制されたものだ。しかし、最近はアメリカの少なからぬ州であらゆる妊娠中絶を禁じる法律が成立しており、人権上の懸念が広がっている。

 ターゲット3.8は「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する」だ。要は日本の国民皆保険制度的な物だと思ってもらえればいい。殆どの海外では貧乏人は十分な医療を受ける事が出来ない。コロナ禍において海外発の怪しげなデマが広がったのも、海外の社会的弱者は、貧困で医療にアクセス出来ない上に、貧困で十分な教育を受けられずに科学リテラシーに劣るゆえに、ワラにもすがる思いでデマを信じやすくなるからかも知れない。

 ターゲット3.9は「環境汚染による死亡と疾病の件数を減らす」だ。日本でもかつては大規模な公害事件が続いたが、先人の努力で改善されている。今では中国の大気汚染などが深刻な問題となっているが、独裁国ゆえに民の苦情は政治に反映されにくく被害が長引いている。

 ターゲット3.aは「タバコの規制を強化する」だ。喫煙は直接的な健康に対する被害もさることながら、禁煙させれば凶暴化する中毒患者や、不始末による火災の被害なども看過できない問題だ。そもそも、これだけ中毒性が強い毒物の販売を国が認めている方がおかしいのであって、中毒患者は国家から賠償金を貰ってもいいくらいだ。

 ターゲット3.bは「ワクチンと医薬品の研究開発を支援し、安価な必須医薬品およびワクチンへのアクセスを提供する」だ。いちいち言うまでもない当然のターゲットだ。反ワクチン陰謀論者は反SDGsでもあると言える。

 ターゲット3.cは「開発途上国における保険に関する財政・人材・能力を拡大させる」だ。貧乏で衛生状態が悪い国では病気が蔓延しやすい。ゴール1と共に対策が必要とされる。個人レベルで出来る事としては赤十字などへのごく少額の募金でもいいから協力願いたい。

 ターゲット3.dは「健康危険因子の早期警告、緩和・管理能力を強化する」だ。いわゆる生活習慣病などの管理を目指すものだ。

 健康問題に関しては本当に無数のデマが飛び交っている。医療者として今後も科学が妄想に社会的敗北を喫しないように努力していきたい。

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