インドネシアのシヴァ−ブッダ信仰
インドネシアのジャワ島周辺は13世紀後半、シンガサリ王国の最後にして最大の王であるクルタナガラ王の治世にあった。彼は自らをシヴァ神とブッダの融合した神聖な存在として君臨していた。発想としては別々の神と仏が融合したのではなく、シヴァもブッダも唯一で絶対の神的な実在の違う表現形だという思想だった。王国の滅亡後、インドネシアではイスラム教が優勢となっていった。このため、近代のインドネシアの国是であるパンチャシラの第一は唯一神への信仰となっている。国民に唯一神への信仰を半ば義務付けるのは純粋に宗教上の話だけでなく、国から無神論である共産主義者を排除する目的でもある(※)。一方で、インドネシアで公認されている宗教は、イスラム教、キリスト教、ヒンドゥー教、仏教、儒教であり、ヒンドゥー教以下の3つは唯一神がいない宗教でありパンチャシラに反するようにも見える。これが許容されているのはクルタナガラ王の考えたところの唯一の真理が諸宗教の根源にあるという解釈が現代に息づいているからかも知れない。
仏教に限らず、宗教が広がる過程で現地の風習や他の宗教と習合することはよくあるが、単に混じるのではなく、各地方や時代でそれぞれ特徴ある習合のしかたをするのはなんとも興味深い話だ。
(※)インドネシアの共産主義者狩りについては インドネシア大虐殺その1 インドネシア大虐殺その2 を参照のこと。
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