コツコツした努力の積み重ねも一瞬で失われる。
親より先に死んだ子供がその滅罪のため三途の川の河野で延々と石を積まされる賽の河原の伝説では、ようやく積み上がりそうになった石の塔はあっという間に鬼に打ち壊されてしまいます。また最初からやり直しです。
私が若かった頃と比べて日本はだいぶん住みやすい良い国になりました。国民一人一人の地道な努力の成果です。とは言え、現代は現代で問題があります。格差は拡大し貧困層も増え、教育水準も低下し、過激なレイシストや陰謀論者が暴れています。しかし、それを問題視し活動する人々も多く、昔と同様に諸問題は改善されていくものと信じます。こう言うと、今の方が酷いとの意見を受けることもありますが、若い方々は昔の酷さをご存じない。
昔は飲酒運転や危険運転でバンバン人が死んでいました。ヤクザが幅を利かせ買収に応じない家屋にはついうっかりダンプカーが突入する事故がなぜか多発していました。殺人などの凶悪犯罪も今より圧倒的に多かったです。今の時代に問題視されている児童の虐待死だって、表に出てなかっただけです。体罰やネグレクトをしつけと呼んで憚らない時代でした。タバコのポイ捨て・不始末による火災や、歩きタバコのせいで火傷を負う人も多かったです。おじさん方は所構わずタバコを吸うばかりではなく公の場でも痰を吐き散らかし小便を垂れ流していました。女性が強姦されればイタズラをされたと言われほとんどの例で罪にもならず、痴漢は挨拶のような物でした。極左テロは吹き荒れ、大学や企業で爆弾が炸裂する。中学高校でも不良が武装し暴虐のかぎりを尽くす。治安を維持するための警察も左翼政党の圧力により手足を縛られた状態でした。そんな地獄のような時代がほんの数十年前の日本にはあったのです。
それが今や、飲酒運転は激減し、危険運転も厳しく取り締まられるようになりました。ヤクザは暴対法で壊滅寸前です。殺人事件も激減しています。児童虐待も見かけは増えていますが実数は減っているでしょう。歩きタバコやポイ捨てもほぼ見なくなりました。昔の漫画で待ちぼうけの男性の足元に吸い殻の山が出来ている場面を見たことがあるかも知れません。あれは時間経過を示す手法ですが、昔はそれが問題視されていなかったのです。道端が小便くさいことも痰を踏むことも無くなりました。強姦や痴漢は今では犯人が社会的な死を迎えるほどの重罪となりました。そこらじゅうで爆弾が炸裂することもありません。校内暴力もほぼありません。逆に荒れる生徒を統制するために強化された校則が人権蹂躙だと問題視される程になっています。警察が凶悪犯を撃っても社会的なバッシングはもう起きません。
しかし、そんな社会も一度戦争が起きて、日本が焼け野原になり、侵略軍の統治下に置かれれば、初めからやり直しです。国民の連携が分断され個人の生存自体が危うい環境では、人倫を守って生き延びるのは困難です。治安も秩序もない暴力が支配する地獄となることでしょう。コツコツと積み上げてきた成果も一瞬で台無しになるのです。
戦争は長年の努力を無にするに十分な暴力です。平和を守る努力を怠ってはいけないし、どこの国に対してでも侵略を容認してはいけません。
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