陰謀論者の説得は本来の目的ではない

 新型コロナウイルス感染症の猛威が続くなか、陰謀論者はあいも変わらずコロナはただの風邪だから経済を回すために元通りの生活にしろなどと訳の分からん事を吹聴して回っています。そして、そんな人に乗せられた多くの人が自粛しなくなっているかのように見えますが、陰謀論者にそんな力はありません。

 いわゆる自粛をしない人たちの多くは陰謀論者の馬鹿げた理屈を信奉しているからではなく、そうしないと生活が立ち行かないから自粛しないだけです。苦しくても自粛をしている人たちの多くには、ちょっとした口実を与えるだけで自粛を終わらせる事が可能となります。後で問題が起きても責任は陰謀論を説いたおかしな人であり、自分は騙されただけだというロジックが成立するからです。

 国民一人ひとりの善意による自粛には限界があります。自分の生活に直接的な危機が迫る時に、自粛を守る事は難しいですし「自粛」の強要も出来ないでしょう。

 公益を考えれば行政は国民に厳重な行動制限をさせたり素早くワクチンを普及させたりするべきですが、行政がそのためにしたことと言えば国民の善意に依存した自粛のお願いと一部から「香典のつもりか」と揶揄される程度の微々たる公的資金援助程度です。しかも、まいどまいど中途半端なところで自粛のお願いすらやめてしまうという意味不明の行動を続けています。必要なのは十分な経済的保証と行動制限の命令です。自粛のお願いなどというものは結局の所は厚生行政の責任を国民に丸投げしているだけです。

 ですが、諸外国では可能な国家の命令による国民の行動制限も日本国の特殊な法的事情を考えれば難しいかも知れません。結局、自粛をお願いするしか無いのならせめてお金をばらまくべきです。こう言うと債務残高の話をしてくる人がおりますが、いま死ぬかも知れない時に10年後に死ぬかも知れない事を心配するなど愚かな事です。平時ならいざ知らず、茹でガエルの如き危機感のなさだと言わざるを得ません。

 こんな状況では陰謀論を吹聴する人はますます勢いづきます。これに対して陰謀論者に議論を挑む人は後を断ちませんが、まあ無駄でしょう。プロの陰謀論者は動画やブログの広告やそれから誘導する書籍や有料記事で生計を立てているのですから、いかなる説得を受けても不安な人たちの心に響くキャッチーなデマを振りまき続けるだけです。

 この問題の最大の目的は感染のコントロールないしは撲滅であり、陰謀論者を個別に説得するという無駄な努力よりは、行政に公的支援を十全に支出させて自粛出来る環境を作るための努力をした方が健全です。もちろん馬鹿げた陰謀論に対してしっかり反論し科学的に正しい知識を広めるのは重要ですが、個別に陰謀論者を説得するのは無駄でしょう。

 

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