心理的リアクタンス理論

 心理的リアクタンス理論とは1966年にジャック・W・ブレームによって唱えられた理論で、簡単に説明すると「押すなよ!絶対押すなよ!!」と言われると押したくなるあの心理状態のことだ。一般的に言うと、個人が特定の自由を侵害されたときに喚起される自由回復を志向した動機的状態だ。

 最近では、新型コロナウイルス対策を無視して、マスクを着けない、ワクチンの接種もしない、密集・密閉・密接状態で騒ぐなどの行為に及ぶ人も多少いるが、彼らは強制に反対し自由を求める心理状態にあるのだと思われる。一方、大半の人が感染対策に関して心理的リアクタンスを生じないのは、その必要性を十分に理解していているからであり、また自由を制限しているものの本質は感染症であり、対策を強制しようとする社会では無いことを知っているからでもあるだろう。自由の回復のためには感染対策をするしかないのだ。

 反ワクチンや反マスクのように極端に有害なものでなくても、人は何かしら規制されるとこうした反応を起こしがちだ。この応用として、よくバーゲンなどで見かける先着何名様に限り半額とかいう情報も、急がないと半額で物を買える自由を失うという制限に対抗する心理を人におこさせる罠であることが多い。こうして哀れな犠牲者はいらないものを買わせられるのだ。

 また、独裁国においても、国民に対し強制や規制をしがちだが、彼らはその原因を外国や国内の反動勢力にもとめてることでうまく民衆からの抵抗を回避している。極論すれば、独裁国は敵がいなくなると困る政体でもあり、常に無実の敵を捏造し続ける。声高に誰かのせいで自由が脅かされているなどという煽り文句を聞いた時は、騙されていないか十分に検証すべきだろう。

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