外国人悪玉論を斬る

 新型コロナウイルス感染症に関して、その初期から一部の人(主に右翼)による外国人たたきがあった。私が見聞きした範囲ではその全ては捏造か歪曲であり、コロナ禍の混乱に乗じてヘイトクライムを犯したい差別主義者の扇動と言える。特に、直近の感染拡大はGoToなどのせいではなく全て外国人のせいだとする排外主義者らの言動は目に余る物がある。今日はコロナ禍に関するこうしたデマを成立時期が早い順に3つ解説していきたい。

 まず、この感染症が拡大し始めて間もない頃から一部で言われ続けているのが、新型コロナウイルスを中国の生物兵器とする説だ。これに関しては100%否定は出来ないのと同レベルで肯定も出来ないはずなのだが、自信満々に断言する右翼の方々は多い。彼らはその根拠として中国ではSARSの研究をしていたというが、以前にもSARSで痛い目にあった中国がSARSの研究をするのは当然としか言いようが無い。一般にはコウモリに感染したSARSウイルスの変異により今回流行しているSARS-CoV2が生じたと考えられているが、もし仮に中国の研究施設から漏れ出たものだとしても生物兵器とは言えないだろう。少なくとも意図的に拡散された証拠は何一つ無い。もし中国に文句を言いたのなら初動の対応のまずさやその後の恩着せがましい外交姿勢に言えば良いのであり、無根拠な難癖をつける意味が分からない。

 次に古い陰謀論は日本の新型コロナウイルスの感染者の殆どは実は外国人だったする妄想だ。右翼の人達が言うには日本の血税を使い大量の外国人を治療しているらしいが、馬鹿馬鹿しいにも程がある。現場で見ていても外国人患者なんてほとんどいない。なぜ彼らがそんな狂った妄想をしているのかというと、厚労省が発表している統計で、患者の国籍不明者が著しく多いので、日本国籍が確認された者以外は外国人だとして騒いでいるのだ。実際に、昨年12月29日18時までの集計では、累計感染者数22万2085人中、日本国籍が確認された者は5万0194人に過ぎずこれは全体の約23%だ。では残りの77%が外国人かと言えばそんなことは当然無い。外国籍が確認された感染者は1923人だけだ。残り大半の国籍不明者は、実は多くの自治体が感染者の国籍を発表していないから不明なだけだ。地域により外国人の人口比率に差はあるだろうが、国籍が分かっている感染者での外国人の比率は約4%であり、全体でも大差は無いと推測される。日本の外国人居住者は約2%であり妥当な割合かと思われる。

 最後は、最近のいわゆる第三波が始まった頃から言われている、この感染拡大は外国人により広がったというものだ。確かに、先月までの日本の検疫は検査の適応が狭く隔離もお願いだけと言う大変にずさんなもので、早々にイギリスで発生した変異株の流入を許してしまった。しかし、この場合悪いのは外国人では無くろくに検疫しない日本国なのだが、右翼さんたちはこの話を次のように解釈する。即ち、感染拡大は外国人が悪いのだからだからGoToキャンペーンは悪くなかったとする謎理論を展開させているのだ。明らかに狂っている。昨年11月の日本への外国人入国者数は5万6700人だったが、10月15日から1ヶ月間のGoToトラベルの利用者は2122万人だったので母数の差は圧倒的だ。一旦入国すれば日本人も外国人も同様の感染対策がなされるので、外国人入国者が主たる原因で感染が広がったわけでは無いのは明白だろう。それにも関わらず、とにかく何でも外国人が悪くて日本政府の政策は正しいと信じて暴れる右翼が多すぎる。

 このようにはじめから外国人が悪くて日本政府が絶対に正しいと信じ、それを証明する理屈をでっちあげると、感染拡大と醜い争いを招くだけだ。まずは冷静に是々非々で物事は判断するべきだ。

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