看脚下

 看脚下とは足もとに注意せよと言う意味でお寺の玄関などで木の板に書かれた看脚下の言葉を時々目にします。

 履物をきれいに揃えるように促したり、段差でつまづかないように注意したりする気配りであると同時に、看脚下は自省せよいう意味も内包されており、玄関を出入りする度にその事も思い出す仕掛けでもあります。

 昔、禅僧の一行が夜道を歩いていた時に、持っていた灯が消えてしまい真っ暗になりました。ここぞとばかりに禅の師からこの暗闇の中をどうするかとの問いが出されます。もちろん、この質問は禅問答として有名な看話禅であり、暗闇の中の道というお題にどういう仏法的な真理を見出すかが重要になります。お弟子さんたちは次々とそれっぽい答えをしますが禅師は納得しません。最後のお弟子さんが「暗くて危ないから足もとに気をつけましょう!」と答えたのを聞き、師匠は満足したと言われます。

 暗い道で足もとに注意を払うのは当然なわけですが、看話禅の公案として質問されると、師に褒められる回答をしようと欲をかいて、物事の本質を見ずに難しく考えてしまい簡単な事も分からなくなるものです。こうした煩悩から生まれる妄想から離れ自分の内外の状態に正しく注意を向けるのは仏教の八正道の一つ正念でもあります。人生は暗闇の中の道にも似ており、常に正念場なのです。

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