陰謀論に騙されている人への対応

 あなたの身の回りにコロナはただの風邪だと信じたり、トランプ大統領は悪の秘密結社ディープステイトと戦う孤高のヒーローだと信じる人はいるだろうか?いたとしてそれを間違っていると指摘した事はあるだろうか?そうした事がある人には分かると思うが彼らの妄想を治すのは至難の技だ。

 こうした陰謀論を信じている人は過激な行動をとりがちであり、自分に近しい間柄なら必死に治そうとするのは人情というものだ。だが、必ずしもその好意は相手に届かず逆にあなたのことを敵だとみなして攻撃してくることもある。悲しいことではあるが自分の身に危険が及ぶようであれば、相手を助けるよりもまず身を守ることが先決となる。彼らの説得にあたるのならばまずそのことを忘れてはならない。

 カルトに入信した者を脱退させようと説得した家族や友人が危険な目にあうのと同じ事だと思ってもらっていい。昨今の陰謀論には明らかな組織的な本部は無い場合が多く、主にネット上で誤った情報が真実として共有され仲間以外は敵だとする考えが育っていく。イスラム国でもそうだったが、明確な指示系統は必ずしもなく、地球の裏側でもその思想に共鳴してテロを起こせばISの聖戦士が行った義挙として宣伝される。陰謀論者も予想外の場所で犯罪を行う可能性があり危険だ。明らかな犯罪の兆候が見られる場合は躊躇なく警察に通報するべきだ。

 さて、身の安全をた保つだけならば、彼らから距離を取るのが最も簡単な解決策だ。だが説得となるとそうもいかない。彼らが罪を犯すの防ぎ妄想から救い出すには接触を図るしかない。陰謀論を信じる人を説得するにはまず、彼らがどんな不満を持っているのかを考える必要がある。陰謀論自体は冷静に見れば論理的に破綻しており何の証拠も無いのだが、それを指摘しても陰謀論者の盲信は解けない。彼らは正しい情報ソースを敵からもたらされた誤情報だと信じているからだ。そんなことを信じるそもそもの原因は何かに対する不満があって、それを解決する簡単な解答を欲しているからだ。福島原発事故の時も、元自衛隊幹部の田母神氏の毎時120シーベルトを数分被曝して初めて遺伝子に障害が出るとか6シーベルトまでは問題ないとかという妄言が一部で信じられていた。彼らは放射線対策で不自由をこうむったり原発が止まる事に対して不満を持っており、それを正当な方法で解決しようとするのではなく放射線の危険性自体を否定することで安心を得ようと盲信したのだ。なので、彼らの不満や不安に対して現実的な解決策を提示することで、それを盲信する人は減る。コロナ幻想論も感染症対策で甚大な被害を被る人達が信じている傾向にある。コロナ対策で被害をこうむる国民に十全な補償を行えば陰謀論を信じる人も減るのは自明だ。トランプ陰謀論の場合は割と深刻で世界の不条理や苦しみの全てを悪の秘密結社ディープステイトの陰謀としているので、世界中の社会問題を解決しなければ盲信は解けない。これに対しては社会問題解決への真っ当な活動を提示することでいくらか緩和されるかも知れない。むしろ陰謀論を信じてしまうような酷い目にあってきた人達に耳を傾けるのがトランプ大統領くらいしかいかなったのが悲劇の始まりであったのだ。

 結局、陰謀論を滅するには社会をより良いものに変えていくしかない。陰謀論は絶望と不満に眼を覆われた人が縋り付く幻想に過ぎないのだから。

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