ビハーラ医療に活かす六波羅蜜、その3

 ビハーラ医療に活かす六波羅蜜、その3です。前回までの布施、持戒、忍辱につづき今回は精進です。精進とは努力するということです。何を努力するのかお話していきましょう。

 お釈迦様が悟りを開いてから初めての説法で四諦八正道という教えを説かれました。この中で説かれた苦を滅するための八つの方法のうちの一つに正精進があります。これは、善いことをして悪い事をしないように、また、すでに起きた悪い事をなくすように、すでに起きた善いことはそれを強めるように努力する事です。簡単なように見えますが実はそうでもない。ユマニチュードのお話の時も書きましたが、正しいことをして間違ったことをしないのは実は大変難しい事なのです。

 七仏通誡偈という偈(詩)があります。一休さんの書でも有名ですが以下のものです。

 諸悪莫作(諸々の悪は行わず)
 衆善奉行(諸々の善を行い)
 自浄其意(自らの心を清くする)
 是諸仏教(これが諸仏の教えである)

 これはお釈迦様を含めて過去にいた七人の仏様に共通した教えとされています。六波羅蜜の精進も基本的に同じであり悪いことを努力してもそれは精進ではありません。

 医療現場でおこりがちな事ですが、度を越えて忙しくなるとどうしても個々の仕事のクオリティーは低下してしまいます。こんな時にはどうすれば良いでしょうか?過労死するまで奮励努力すれば良いのでしょうか?その努力は正しい精進でしょうか?違いますね。仕事の質を下げずに持続的に働けるような工夫をするのが正しい精進です。では、その工夫も限界な場合はどうでしょうか?結論から言うと持続可能なレベルで妥協するしかありません。サービスを提供する側の労働者が全滅してしまえば、受益者も程なく全滅してしまいます。一部に善い事を選択すれば一部は悪くなることもあるのです。正しい精進をするのも難しいですね。ですが、こうして悩み考える過程にも意味はあります。少しずつ精進して参りましょう。

 それではまた、合掌。

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