過労死

 国内外の疫学調査によると週に55時間以上の労働は脳卒中や虚血性心疾患のリスクが増大させると言われている。医師は週に100時間以上働く人も珍しくはなく、小生の友人でも若くして突然死した医師はいる。いたましいことだ。お釈迦様も度の過ぎた苦行を禁止していた。昔から過労死する人は多かったのだろう。世のため、人のためと働く人は立派だが、過労死しないようにちゃんと休んでほしい。持続可能な努力の方が結果として多くの人を救う事になる。確かに人間は、ここぞと言う時に頑張らねばならないこともある。それはしょうがない。だが、人にやさしく責任感が強い良い人ほど無理をしてしまう傾向にあるので、職場では周囲にも気を配りたい。

 去年、労働安全衛生総合研究所から発表された短報によると、30〜60歳代に模擬長時間労働を課したら作業中の血圧は50歳代以上で有意に高かったという。血圧の上昇は脳卒中や虚血性心疾患の危険因子だ。

 時代劇などで登場人物が憤死するシーンを見たことがある人も多いだろう。あれは怒りのあまりに死ぬのではなく、怒りで血圧が上がった結果、脳卒中や心臓疾患などが惹起されたと見るべきであり、実際に起こりうる。血圧を甘く見てはいけない。過剰な塩分摂取を避けて十分な休養を取るのが大切だ。

 もちろん、血圧だけが過労死の原因ではない。過労でうつ病となり自死する場合も多い。精神的に参った時もとにかく休んで、必要に応じて精神科を受診することが望ましい。

 また、もし家族が過労死した場合、労災の申請をしないと補償を受けられない。労災の申請には時効があるので、もし疑問に思うことがあれば、なるべく早めに労働基準監督署に相談した方がいい。なお公務員の場合は身分により申請先が違うので、職場の事務方に問い合わせるのが早いかと思われる。嫌な話だが、過労死の疑いがある場合に、わざわざ労災の申請を勧めてくる企業や組織は皆無なので、疑った時は遺族が動く必要がある。現在、過労死と認められる目安は、脳や心疾患の場合は直近一ヶ月の時間外労働が100時間以上か、直近2〜6ヶ月の時間外労働が月あたりの平均で80時間程度とされる。心理的な負荷によるものの場合は、それを認めるうる特殊な出来事があったのかなどが争点となる。

 過労死をゼロにする為にも、人類が思いやりの心を持つように祈る。

コメント

このブログの人気の投稿

妙好人、浅原才市の詩

現代中国の仏教

懐中名号