オクラホマの中絶禁止法

 2022年4月12日、アメリカはオクラホマ州で前代未聞の中絶禁止法が可決された。それは妊娠の週数に関係なく、母体保護のため緊急を要する場合以外の全ての妊娠中絶を禁止するというものだ。この中絶禁止には強姦による妊娠も含まれる。母体に危険があっても緊急性がなければ中絶できないのなら、事実上完全な中絶禁止と同義だ。

 これは週数の制限も撤廃されたという意味で、去年9月から施行されているテキサス州の中絶禁止法よりも徹底している。なお、避妊薬の使用までは認められている。罰則も中絶を行った医師に禁錮10年以下の懲役か10万ドル以下の罰金あるいはその両方が課せられる。これで中絶をしようとする医師はいまい。

 つまりオクラホマ州では、健康状態から妊娠の継続に不安があっても、強姦の結果出来た子でも、経済的に出産が困難な場合でも中絶は認められない。中絶が合法な州の病院にいける金銭的余裕がある人間はまだ良いが、貧困層が中絶せざるを得ない場合は一般の医療にアクセス出来ずにリスクが高い非合法施設での手術や投薬を行うか、諦めて高リスクの出産をするしかなくなる。

 このような非人道的法律が成立したのは、アメリカ南部を中心に広がるプロライフ派と呼ばれるキリスト教原理主義思想の影響が強く、反ワクチンなどの非科学的カルトとも親和性も高い。彼らがアメリカに政治に強い影響力を持ち始めているというのは由々しき事態だといえる。類似の中絶禁止法はテキサス、ミシシッピ、アリゾナ、アイダホ、そして今回のオクラホマで成立しており油断ならない情勢だ。

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