殯(もがり)

 殯(もがり)は死者をお客様として身辺に安置する古代日本の風習で、後に仏教と習合していわゆる御通夜になったとの説もある。

 具体的には、古代の皇族や貴族が死んだ時に建物をたてて遺体を収め、その前で歌舞音曲をもって霊を慰め、酒食を饗してあの世への旅立ちに際しての力としてもらうようにしたものだ。そうして死者を弔いながら一定期間(長い場合は3年)は埋葬せずにいた。確実に死亡を確認するだけならばもう少し短くても良いはずであり、宗教的あるいは政治的な意味もあったと思われる。

 この風習は仏教伝来以前からあり、仏教伝来後は徐々に廃れていったが、殯は形を変えて現代まで天皇家には受け継がれている。仏教ではお釈迦様の死後7日間に渡り在家信者の供養が続き、その後に葬儀が執り行われ仏弟子の大迦葉の到着をまって火葬されたとの伝承がある。この言い伝えと殯が習合したのが御通夜だとも言われる。ちなみに単に通夜といえば徹夜で勤行などを行う意味で必ずしも葬儀に関連した言葉ではない。

 殯や御通夜だけでなく世界各地でも死者を弔い供養し送り出す儀式は存在する。文化や言語は違っても同じ人間なのだと思わせる事実だ。葬儀など世界中の人々は共通点も多いのだからもう少し仲良くして欲しいものだ。きな臭い地域も多いが戦争にならないように祈る。

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