懲戒権の削除だけでは不十分

 昨日、民法から親権者の子供に対する懲戒権を削除し体罰を禁止する項目を追加するという案が、法制審議会の親子法制部会から出された。

 これは良いことだ。今後は民事裁判で被害者が有利になるかも知れない。だが、民法を改正しても虐待防止にはあまり効果を見込めない。現在、実際に虐待をする側の大人は、民法上の子供への懲戒権を盾に虐待している訳ではないからだ。

 虐待を防ぐためには、まず子供を物理的に守る強制力が必要だ。現在、この強制力は児童福祉法により担保されているが、その執行機関たる児童相談所に十分な人的資源や予算が割かれているかは疑問だ。児相の職員は児童を虐待するような異常で暴力的な人物と対峙しなければならない。警察のサポートもあるとはいえ、危険な上に多忙で給与も大したことはない。予算と人員の補充を望みたいところだ。

 また現状は、保護した子供をしっかり守り抜けているかにも疑問がある。親が反省したと言っているからといって虐待をするような人間のもとにたやすく子供を返すべきではない。子供が望めば成人まで公的に衣食住と教育が保証される環境を提供しなければ、しぶしぶ親元に帰ることを選ぶ児童もいるだろう。

 さらに、虐待加害者は精神的に病んでいる場合が多いので、子供を守ると同時に加害者側へ適切な治療を提供する体制も必要だ。悪質な物に関しては厳しく処罰する刑法の改正も望まれる。

 被虐待児童の保護という観点では昔よりだいぶん改善されてはいるが、未だに虐待加害者に対する法整備は不十分だと言わざるを得ない。今後も改善を期待したい。

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