五葷が禁じられている理由・アップデート


 禅宗などのお寺の前にはよく不許葷酒入山門と刻まれた石塔がある。ニンニクなどの臭いのきつい植物や酒は境内に持ってきてはならないとの意味だ。

 以前このブログでニンニクなどを禁じた禁葷食について触れたときに、これらが禁止される理由として独特の臭気の他に、強壮作用がある(結果として淫欲を起こすなどの弊害がある)ことを挙げたが、実は歴史学的な視点では強壮作用云々は後付けの理由らしい。

 五世紀前半に活躍した曇無讖の訳の「大般涅槃経」では五葷を食さないことで体が臭くなくなれば神や人から褒められるという内容があるものの、強壮作用に関する記述はない。五葷を禁じる戒が書かれている「梵網経」について六世紀に活躍した天台大師智顗が解説した「菩薩戒義疏」でも五葷が禁じられる理由は臭みが教えを妨げるからであった。五葷が惹起する淫欲や興奮が言及されるようになったのは、その後の文献にしか見られないという。

 また、上記の大乗版「大般涅槃経」では肉食による体臭が菩薩としての布教の妨げになるとある。衛生状態が今より遥かに劣悪だった時代において食事の内容による体臭の変化はかなり深刻だったのかも知れない。

 伝統的に禁じられている事をあえて犯す必要もないが、五葷禁止の理由が臭いだけなら品種改良や防臭技術の発達でクリア出来そうだ。出家でない小生はニンニクやニラを食べても怒られないだろう、きっと。

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