護国神社

 北海道と殆どの府県にある護国神社を靖国神社の地方分社だと認識している人は多い。確かに、靖国神社と各地の護国神社には密接な連携があるのは事実だが、護国神社が靖国神社の分社との認識は正確とはいえない。

 例えば全国にある稲荷神社の多くは伏見から分霊された祭神を祀っている。しかし、護国神社の祭神は靖国神社から分霊された御霊では無く、各神社がそれぞれに招魂した英霊達を祀っている。

 結果として護国神社では、靖国神社で祀られている神々のうち各地に縁のある方々を祀る形となるが、完全に一致してもいない。靖国神社では原則的に戦時下の軍務に殉じた国民を祀る訳だが、一部の護国神社では自衛隊員や殉死した公務員や戦火に巻き込まれた民間人も祀っている。

 護国神社のそもそもの成り立ちも、明治に入って各地に戦火に倒れた人々を祀る招魂社が多数出来ていたのを後に地域ごとにまとめたものだ。靖国神社ありきでは無い。この時に出来た護国神社はだいたい何々県護国神社という名前がついているが、それ以外の地域独自の護国神社も今に残っている。

 護国神社は主に地域の戦死者を祀るという性格上、神社を支えて来た人の多くは遺族の方々だった。しかし直接の遺族も徐々に減少し、地方では過疎化も進んだ影響で今後の存続を不安視する声もある。神社の維持費も馬鹿にならない。神社の財務状況が逼迫すれば怪しげな連中の付け入るスキも生まれる。

 戦争の記憶がどんどん薄れいく昨今、遺族の想いを伝えて来た護国神社にはどうか健全な形で残って欲しいものだ。

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