不説四衆過戒
不説四衆過戒は菩薩にかせられる十の重い禁止事項(十重禁戒)の一つで、通常は男女の出家者と在家者の過失を咎めない事とされます。同じく菩薩にかせられる四十八の軽戒のうちには、戒に背いたものを見過ごさずにその罪を教えて懺悔させねばならない(不挙教懺戒)があり、不説四衆過戒と合わせることで、他人の過ちは吹聴して責め立てずに、過ちを犯した本人に懺悔を促すのが良いとされていることになります。
しかし、もし仏教者が内部の不祥事を一切告発出来ないのであれば、例えばある僧侶が殺人や強盗や強姦など僧侶の資格が剥奪されるような戒を破っても、本人の懺悔による自白によってしか罪が成立しなくなります。どんなに個人的に懺悔を促されても犯人が嘘をつき続ければ宗教的に悪業を積むことにはなっても、僧侶の資格が剥奪される事はなくなります。これは流石に問題です。
ちなみに僧侶の集団内の最高刑は僧侶の資格の剥奪です。普通の犯罪行為は世俗の法により裁かれることとなります。
罪を犯した人に懺悔を促すのは良いとして、それを聞き入れてもらえなかった場合、あるいは既に罪を犯した人間が死亡している場合などは、被害者救済の問題もありますし、起きた事件に対して然るべき調査と議論が必要でしょう。不説四衆過戒を仏教集団内の不祥事を隠蔽する口実として使ってはいけません。
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