新嘗祭

 11月23日は勤労感謝の日です。戦前は天皇陛下により行われる宮中祭祀である新嘗祭を祝う日として、同じく新嘗祭という名前の祭日でもありました。宮中祭祀の新嘗祭では、その年に取れた新穀を陛下が天照大神をはじめとする神々ささげ、ご自身も食されると言われます。天皇陛下は天照大神の子孫ということになっていますので、この祭祀は先祖崇拝の形の中にあります。また、新嘗祭に先立つ10月には伊勢神宮で神嘗祭と言われ、同じく新穀を神々に捧げる儀式が行われ、この際に今上陛下に神々の力がいただけるように祈られます。

 宮中以外でも各地の神社で新嘗祭は行われており、収穫を神に感謝しともに祝うという図式は継承されています。収穫を祝う祭りの起源は記録に残っていない程の昔、日本に農耕が定着した頃まで遡るとも言われます。同様のお祭りは世界各地にもみられ、農作物を実りを祝う気持ちは世界共通です。

 また、人間だけでなく天照大神も高天原で農耕にはげまれ同様の祭祀を行うとされています。古事記にもある天の岩戸の伝承でも、素戔嗚尊が姉である天照大神の田や祭祀を行う場を汚したとの表記があります。そうなると新嘗祭は神も人も共に働き共にその恵みに感謝し収穫を祝う日だとも言えます。

 さて、祭祀としての新嘗祭は今でも宮中や各地の神社で行われていますが、祭日としての新嘗祭は戦後に祝日としての勤労感謝の日となります。この名称の変更はGHQの方針によるものですが、新嘗祭の心を伝える感謝の文字が残っているのには先人の努力が偲ばれます。

 新嘗祭だけでなく、世界中の収穫祭にも感謝や祝いの心があり殺伐した心を和ませる効果もあります。世界が平和でありますように。

 

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