阿呆陀羅経
阿呆陀羅経とはお経のように(主に和讃風に)社会風刺を詠んだり歌ったりする一種の話芸で、江戸後期に流行しその後も受け継がれていましたが、現在ではほとんど目にしません。レコードやビデオなどの媒体で残る阿呆陀羅経は、民謡風だったりジャズ・ロック風だったりするものもあり、内容も社会風刺だけでなく漫才風のものなども多く、もはや阿呆陀羅経だと名乗ったのもが阿呆陀羅経だと言えなくもない物です。また、韻を踏みリズムを重視する歌詞はラップのようでもあります。歌い出しが「仏説阿呆陀羅経」となっているものもあり自分が好き勝手に作った歌詞を仏説というあたりはなんとも不敬ですが昔の冗談はかなりキツイものも多く、ある意味で寛容だった時代背景もあるのでしょう。また阿呆陀羅経には当時まだ権威があった仏教界を茶化す面白さもあったと思われ、現代の権威が弱くなった仏教をイジってもそうインパクトはなく面白くもありません。
こう考えると阿呆陀羅経は滅ぶべくして滅んだ芸能とも言えます。今後も生きた話芸としてではなく、文献や音声・画像データとして記録が伝わっていくのだと思います。はてさて、昔の阿呆陀羅経と同じく、今ある新しめの芸事や趣味のジャンルが100年後、200年後にどのていど記録としてでなく生きた芸や趣味として残っているのか気になるところですが、それを見届けることが出来ないのはちょっと残念です。
実際にここ半世紀ばかりでも、趣味の世界ではイギリスの狐狩りは事実上滅びましたし、芸事で言えば純粋なパンクロックも滅んだと言っていいでしょう。全ては記録の中にしかありません。まさに諸行無常。
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