YouTubeの陰謀論規制

 YouTubeが根拠のない反ワクチンの陰謀論を規制するようにしたという。大変よい取り組みであり、多くの陰謀論書籍の広告が掲載されている新聞各社にも見習ってほしいものだ。

 反ワクチンの陰謀論を吹聴してきたYouTuberはニセの情報を多くの人に信じさせる事により広告収入を得てきた詐欺師であり、それを信じた人たちの公衆衛生に反する行いにより多くの人が死んだり後遺症を残したり人間関係を破壊されたりしてきた。遅きに失した感はあるが、今回のYouTubeの姿勢を強く支持したい。

 だが、一方でこの決定を、ワクチンに何らかの問題があっても批判できなくするものだと誤解する人もいる。これは断じて違う。もし、ワクチンに副作用を含めた何らかの深刻な問題があれば、製造販売は中止するべきであり、そのための検証は常に行われている。科学的に妥当な批判までが禁止されるのではない。今回の陰謀論は科学的証拠が無いデッチあげの嘘を吹聴し多くの人を騙し、事実でない信じれば危険な情報を、あたかも真実であるかの様に吹聴したのが問題なのだ。証拠はあるなどと言う陰謀論者もいるが、彼らが出す証拠は全てウソだ。調べたり考えたりする能力に劣るか、その努力を放棄する人たちを騙すために捏造されたニセの証拠に過ぎない。

 また、言論の自由に反するとYouTubeを批判する人もいるが、これもおかしい。他人を傷つける明らかに嘘の情報は公衆衛生や治安に有害であり看過できない。当然ながら言論の自由の範疇には含まれない。こんなものが認められるのならルワンダ虐殺事件の際にラジオルワンダで流された異民族への敵愾心をあおる偽情報の類も禁止できなくなる。まあ、ざっとTwitterを見ただけでも、実際にいま言論の自由がといってYouTubeを批判している人の大半が日頃からヘイトスピーチをしている人なので、そういうことなのだろう。

 今回の反ワクチン騒動だけではなく、近年の陰謀論はネットの発達も相まって社会的な脅威と言える。昔の陰謀論は一部マニアが冗談で作り上げた感もあり、オカルト雑誌にある社会を裏から操る闇の秘密結社的なヨタ話は面白い小説のようなものだった。しかし、昔から本気で信じてしまう人もいた。ユダヤ陰謀論を信じたヒトラーが何をしたかは世界中の人が知っているし、オウム真理教の信者がテロを起こしたのも終末論的な陰謀論を信じたからでもある。だが、身近に多くの陰謀論者が出現するという事態は今世紀特有のものではないだろうか?ネットが危険と言うよりも、規制やルールが追いついてないのが危ういのだ。

 今回は一企業の英断だが、社会全体に対して法的な制度も整備すべき時が来ているのは間違いない。また、今回の出来事で人類の教育水準の低さには改めて驚かされた。公的な教育予算はふんだんに使うべきだ。選挙も近いが衆愚政治的なあおりしかできない候補者が一人でも多く落選するように祈るばかりだ。

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