ウイグルのアトラス織

 ウイグルこと東トルキスタンの名産品の一つにアトラスという絹織物がある。アトラスとは絞り染めの意味だとされるが染められるのは絹糸の段階であり、製法としては絣だと言える。

 シルクロードはその名の通り絹の交易で栄えた路だが、なかでもウイグル南部の街ホータンは古くから絹の生産が盛んで、その起源は1世紀頃までに遡るという。高名な玄奘三蔵もホータンを訪れており、漢土からホータンに養蚕が伝わったという蚕種西漸の話を残している。1901年この蚕種西漸の場面を描いたと思われる板絵がホータンのダンダン・ウィリク遺跡から英国の考古学者スタインにより発見され大英博物館に所蔵されている。ホータンの絹製品は質がよく、絹製品の元祖である漢土に輸出されるまで発展した。

 アトラスには独特の柄があるが、7世紀頃に日本に伝わった仏教の幡(広東平絹幡)にもこれに類似した柄の絹が使われており、以前から同様の柄だったのかも知れない。ホータン王国は紀元前3世紀にインドから来たアショーカ王の子がその礎を作ったという伝説もあり、その後11世紀まで仏教の盛んな地域であったので、漢土に輸出されたアトラスが日本に伝わった可能性もあるだろう。ホータンは宝石の玉の産地としても知られており、シルクロードにあって交易が盛んだった。

 さて、そんな歴史をもつアトラスだが、中国のウイグル人弾圧によりその文化の命脈も断たれようとしている。亡命ウイグル人たちにより食事、服飾、音楽、舞踊などの文化や言語を保つ努力がなされているが、異国でのこれらの活動は困難を極める。ぜひ助けてあげてほしい。



アトラス





広東平絹幡


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