サブリミナルのコーラは無かった

 サブリミナル効果は今でもその実在を信じている人が多いが、実際は眉唾ものだ。

 この伝説の発端となったのは、1956年、アメリカの映画館で「ポップコーンを食べろ」「コカ・コーラを飲め」というメッセージを客に認知出来ないようにわずか1/3000秒スクリーンに映しだしたところ売上が上昇したというデマだ。この嘘を広めることでこうした映像を映し出す装置を売って儲けようとしていたとの説もあるが、今となってはそれも本当だったのかどうか分からない。そもそも1/3000秒映画のコマとコマの間に映し出す技術は当時は無い。設定からして無理だし、実験の方法や条件も詳細は発表されておらず、もちろんこの実験の学会報告も論文も存在しない。この実験をやったと主張するヴィカリーはアメリカ連邦議会等からの要請で1/20秒のメッセージを5秒おきに映す実験を行ったが、やはり効果は無かった。この実験は単盲検もされておらず科学的な意味は無いが、多くの人が信じているポップコーンとコーラのサブリミナル効果を示す実験は無かったのだ。また、その後、リプトンのアイスティーのメッセージに効果がみられたとする報告もあったがBBCの再検では統計的に有意な差は無かった。他の実験でも明らかなサブリミナル効果を認めるものは存在しない。

 だが、自分が知らないうちに誰かに操られているかも知れないとする人々の恐怖は強く、今でも世界の多くの国でサブリミナル映像は禁止されている。

 実際に効果は無いと思われるが、TBSのようにサブリミナル映像を用いた報道番組を作って批判された実例もある。この場合おそろしいのは恐らく存在しないサブリミナル効果よりも、それを利用して視聴者の心を操ろうとする意思をもった報道関係者がいると言うことだ。

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