百万塔
百万塔は、藤原仲麻呂の乱の後に、称徳天皇の発願により鎮護国家と滅罪の為に造られた百万基の小塔で、その中には無垢浄光第陀羅尼経の陀羅尼が銅版によって印刷され収められています。この陀羅尼の大半は西暦767〜769年にかけて印刷されており現存する制作年が明らかな世界最古の印刷物としても有名です。
称徳天皇と言えば、愛人の僧侶である道鏡に帝位を明け渡そうした愚行で知られますが、この無駄に多い百万塔の制作もむべなるかなというところです。
百万塔は、21cm強の三重の小塔十万基に十基の七重塔と一基の十三重塔がつけられた状態を一組として、十の大寺院に十万基づつ収められました。各寺院は小塔を収める泰安殿を作り小塔院や万塔院と呼ばれましたが、時代を経るごとに焼失などしていき現存するものは法隆寺由来の四万六千基ほどと言われます。現在でも法隆寺の大宝蔵院の順路の最後の方で百万塔の一部を見ることが出来ます。また奈良にある真言律宗の小塔院は元興寺の小塔院跡です。
過去には小塔が民間に譲渡される事もあり、その圧倒的な数からか勅願の品なのに割とぞんざいな扱いを受けています。勅願の品とは言っても奈良の大仏や各地の国分寺と比べるとインパクトにも実用性にも欠いており、有り体に言って数が多すぎなのでそんなものでしょう。とはいえ百万塔は約1300年の時を経て今に伝わる貴重な文化財ではあります。時々ネットでも売ってますが真贋定かでなく手を出さない方が無難でしょう。
コメント
コメントを投稿