ご先祖様と三十三回忌
正月に各家庭を訪れる歳神様は、故人の霊が長いこと祀られてご先祖様と一体となった神であるとの説がある。
日本の仏教で年忌が概ね三十三回忌で終わるのは、こうした仏教伝来以前からの祖霊が一定期間祀られると神になるという思想との習合だといえる。
神道では傑出した人物を神として祀る事はあるが、大半の一般人は個別に神として祀られることはなく、祖霊の一つとして祀られ長い時間が経過すると、その家のご先祖様に統合され神として扱われることになる。
故人が長く祀られると、お参りする側で故人と直接の面識がある人は徐々に減っていく。三十二年はまだ故人を覚えている人がいるうちに祀り上げるという意味では理にかなっている期間と言えるだろう。
ちなみに、仏教が残っていた頃のインドでは一部の宗派で七日ごと七回、四十九日までの追善供養を行っていた。これが漢土に渡ると十人の王様が死者を裁くという現地の思想と習合しインドの七回に加え百箇日と翌年の一周忌さらに二年目の三回忌が加わり合計して十回の仏事が行われるようになった。日本ではさらに七回忌と十三回忌と三十三回忌が足され合計十三回の仏事が営まれるようになり、各仏事を担当する十三の仏への信仰も成立している。
こうした習合はあるが、日本古来の神としてのご先祖様は成仏してどこか遠いところに行くことはなく、ご近所にとどまっているのが普通だ。ただ、日本の仏教宗派でも浄土真宗は成仏した故人はこの世に戻ってきて人々を念仏の道に導くとされており、祖先が自分たちを見守っているとの考えは受け継がれているよう思える。
こうした、先祖にあたる神仏を拝むのは圧倒的に強い親からの恵みを期待するという面もあるだろうが、自身が死んだ後に残る家族が心配で、彼らを守る神仏でありたいと願う人の気持の表れでもあるだろう。
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