剣術と不動

 有名な沢庵和尚はこれまた有名な徳川家兵法指南であった柳生宗矩と親交がありました。こうした縁もあり和尚から宗矩に送られた言葉をまとめたとされるのが「不動智神妙録」です。その中の法話で面白いのが、物に心を止めずに自由に動き続けることを不動智と呼んでいることです。心が何かにとらわれるとそこに分別が生まれてしまい、自由に動けなくなる。こうした心が止まった状態は不動とは言わないのです。例え話として、10人に斬りかかられた時にその中の1人にのみ注意を払って心を止めれば他の刃は避けられないが、心を自由にすれば対応出来るとあります。もっとも斬りかかられるのが天下の剣豪柳生宗矩ではなく凡人ならば10人が刀をもって襲ってきた時点でどのみち助からないと思っておいた方が良いでしょうが、言わんとしているところは理解できます。スリは、被害者が財布以外の何かに注意を向けている時を狙うものです。

 スポーツのフェイントも何か真の目的以外に選手の注意をそらすことで成り立っています。つい引っかかって心がそちらに捕らわれると、出し抜かれてしまうのです。

 個別のスポーツや武術以外にも、軍事や政治や日常生活においても余計な物に執着して本質を見誤る事は多々あり、用心してまいりたいところです。

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