秘事法門

 秘事法門は浄土真宗系の異端の総称のようなもので、古くは真宗の開祖親鸞聖人に義絶された実子善鸞の教えも含まれる。果たして善鸞の教えが今でも残っているのかは分からないが、近年見られる浄土真宗系の新興のカルト教団などとは違い、かなり古い歴史を持ち現代まで秘密裏に教義が伝えてきた集団もある。

 親鸞聖人の曾孫で本願寺第三代門主にあたる覚如上人も、阿弥陀如来ではなく宗教指導者を帰依の対象とする知識帰命を行う「夜中の法門」と呼ばれるものがあると改邪鈔の中で指摘している。浄土真宗中興の祖の第八代蓮如上人もその御文章でいくつかの秘事法門を批判しており、なかには自己と仏を一体と捉え仏を拝まない不拝秘事というものもあった。この不拝秘事は見方によっては密教の即身成仏のような考え方でもあり、潜伏している間に他宗派や他宗教の色んな要素を取り込んでいったとみられる。

 こうして潜伏して伝えられた秘事法門は一般の僧侶を敵視し、伝承する俗人の宗教指導者に帰依し礼拝するもので、弾圧の対象でもあった為かその組織は小規模の物だったが、方々に分裂して広く伝承されていった。戦後の昭和時代にもたまにこうした集団の報告はあった。秘事法門は個々にかつ秘密裏に伝承されるものであるから、一つの秘事法門が調べられても全国にどれほどの集団がいるのかは分からない。だが、伝承の形態を考えると地縁の薄くなった現代では恐らく減少し続けていると思われる。

 潜伏状態で伝承された教えにどのようなバリエーションが生じているのか学問的に気になるが、恐らく今後も明らかになることなく徐々に滅びていくのだろう。諸行無常。

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