タリバンの東トルキスタンへの浸透はありうるか?
中国政府がアフガニスタンを制圧したタリバンへの懐柔を進めている。これは、中国が軍事侵攻し支配下においているイスラム圏の新疆ウイグル自治区こと東トルキスタンへのタリバンの浸透を避ける為だと言われている。今回はタリバンが東トルキスタンに浸透、進出することはありうるかについて考えてみる。
結論から言うと可能性は薄いと思う。だが、タリバンでもそれ以外でも何らかの原理主義組織が中国への攻撃を行う事はあるだろう。
その根拠だが、東トルキスタンのウイグル人を主とする民族の文化では歌舞音曲が大事にされており民族衣装もきらびやかだ。タリバンなどのいわゆる原理主義組織からみた場合、これは大変不真面目というか反イスラム的だとの判断をされかねない。実際に、タリバン占領後のアフガニスタンでは音楽や芸事をする有名人が殺害されたりしている。そんな状況で、中国政府が反米的な立場でタリバンに近寄れば、原理主義的には正しくないウイグル人たちを助ける動機はタリバンには少ないと思われる。これに対しては、原理主義的視点でみれば多少不真面目でもイスラム教徒のウイグル人を虐殺する中国政府は、タリバンにとって敵なのではないかという意見もあるだろう。しかし、政治的に考えてタリバンも全方位に喧嘩を売るのは得策ではなく、要は中国からの利益を得る為にウイグル人を見捨てうる口実があれば容易にそれに乗るだろうと考えられ、実際にそうなりつつある。
しかし、これはなんだかんだで国を統治する必要があるタリバンならそうだろうという事であり、そんなもの関係ないガチの原理主義者は中国を攻撃してもおかしくない。中国としては、そのような強硬な原理主義者をタリバンによって抑えようとする意図もあるだろう。また、文化的にみて原理主義から遠いと思われるウイグル人の中にも、中国政府からの弾圧や虐殺を受けて原理主義に鞍替えする人が出ていても不思議ではない。
そもそも、イスラム教は特に中央アジアや東南アジアではかなり地域文化を取り入れた形に変容していた。これは特に異常でな話ではなく、あらゆる世界的宗教は伝播とともに地域の特色や時代の影響を受けて変わっていき多様性が増していくのが普通だ。しかし、イスラム教に関しては預言者の直接の言行がしっかり記録されているので、他よりも多様性は生じにくいはずだ。それでも多様性が生じた理由は、イスラム教を布教してきた知識層が代々、その地域に受け入れられやすいようにして教えを説いてきた結果だろう。しかし、インターネットが発達してからは原理主義の言説が直接一般信者に見聞きされるようになった。そうなると、うちの地方の宗教指導者が言うことは原理主義と違う間違ったイスラム教だったのだという思い込みを持つ人が増えて世界的に原理主義者による暴力が増えたのだ。寛容性の高いローカルのイスラム教と非寛容な原理主義のどちらが、より本来のイスラム教に近いのかは個々の価値観や見解によるが、その正解がどちらであっても、このような経路でテロが増える可能性はもちろん東トルキスタンにおいてもある。中国が東トルキスタンの情報遮断にご執心なのは、内部での悪行を世界に拡げまいとするのが主な動機だろうが、逆に過激思想の流入を恐れているからでもあるだろう。
原理主義者による暴力は個人的には反対するが、東トルキスタンは今まさに滅亡の危機に瀕している。その国民が原理主義者を頼って武装蜂起する可能性は決して低くは無いだろうし、原理主義者に頼らずとも決死のレジスタンスがゲリラ戦を展開することもあるだろう。タリバンは寧ろそんなウイグルのイスラム教徒たちの敵となる可能性が高い。
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