中秋の名月と放生会
本日は中秋の名月です。古来から月を愛でる風習がある日本でも、平安時代に唐の文化を受けて特に旧暦8月15日の月を眺める宴を催すようになっていきます。月見に宗教的な意味はなく単に月を眺めて楽しんでいました。
さて、旧暦8月15日のお月見自体には特に宗教的な意味は無いのですが、明治時代より前のこの日は岩清水八幡宮などで放生会が行われる日でもありました。
放生とは捕らえられた虫、魚、動物などを解き放つ行為で、梵網経や金光明経などにも説かれる殺生を戒める慈悲の実践です。道教の列子にも同様の行為を元旦に行うとの記載があります。
八幡宮の放生会は、元々は九州での内乱平定の犠牲に対して八幡神の宣託を受け宇佐八幡宮で行われてものが原型とされます。八幡神は応神天皇の神格であり、神仏習合時代には八幡大菩薩と呼ばれていました。このため、仏教行事である放生が八幡宮にも取り入れられた訳です。
さて、放生会の日には生き物を捕らえている人はそれを放すのですが、特に生き物を捕らえていない人にも放生してもらうために、昔は鳥やウサギや亀などが売られていたそうで、なんともマッチポンプな話です。環境の遺伝子汚染などが問題なりそうな行事ですが、奈良の興福寺で4月に行われる放生ではこの問題を重視し去年から池に生息する在来種を捕らえて放すようになっています。もはや単なるキャッチアンドリリースですが、生き物を逃がすという象徴的な行為に意味があるのでしょうし、時代の流れでもあるしょう。
さて、各地の八幡宮を中心に行われていた仏教風の儀式である放生会も、明治維新の廃仏毀釈により名称や開催日の変更を余儀なくされます。しかし、放生会を元々行っていた神社は何だかんだで祭事を引き継いでいるところも多いです。旧暦8月に近い新暦9月に行われる事が多いですが、日付は様々です。
昔、旧暦8月15日に放生会を行った人々は夜に中秋の名月を見上げます。月は仏法の象徴ともされますから、宗教と無関係の月見でも思うところがある人も多かったはずです。皆様の住む地域では月は見えていますか?
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