反社会的組織の構成員の人権

 反社会的勢力である暴力団の構成員に対して、銀行口座を開かせないとか、賃貸住居に入居出来ないなどの規制は暴対法と暴排条例の施行以後から日常となったが、先日はついに都市ガスの利用を認めないという企業まで現れた。いわゆるライフラインの使用契約をも停止するのは人権問題では無いかと指摘する人達もいる。確かに、法律的には暴力団員であること自体に刑事罰の適応は無いはずなのだが、現在の法律の運用では暴力団員に対して社会的な制裁を加えることが事実上、民間レベルにも義務付けられている。日本の刑法では教育刑を基本としているにも関わらず、私刑を推奨する応報刑的な法の運用が人権的に考えて問題なのは間違いない。そんな事をせずとも暴力団員であること自体を刑事罰の対象にすれば、さっさと全員収監してしまえて手間も省けるというものだが、これを可能にすると暴力団に指定さえしてしまえば、日本に存在するあらゆる団体を合法的に潰せるので、そんな強すぎる権限を国に与えて良いのかと考える人達の反対で今後も当面成立する事は無いだろう。

 さて、現状が暴力団員の人権を考えた時に問題があるのは間違いないが、この問題を論じる時に人権を守れと言う人の一部、いや多くに、論点のすり替えを企む輩がいる。つまり、法律とその運用が人権をないがしろにしているでは無いかというのが論点であるにも関わらず、暴力団がいかに社会に有用であるかを力説し、だから暴力団を守るべきだという話に持っていこうとする人が多すぎる。

 曰く、暴力団があるからコントロールが効かない半グレや海外の犯罪者集団などを抑えられていたのに暴力団を潰すから、そういった奴らがより無秩序に暴れているだとか、不良のたちに働く場を与える必要悪だとか、地域の問題を解決し義理人情に厚いいい人たちだったとか、そんな話を声高に主張して暴力団を守ろう!人権を蹂躙する政府に文句を言おう!などとするトンチキ野郎のなんと多いことか、嘆かわしい。

 法律やその運用に人権上の問題があろうがなかろうが、暴力団が滅ぼすべき社会の敵であることになんの変化も無い。どさくさまぎれに暴力団を支援するんじゃあない。暴力団を滅ぼして他の組織が暴れるならそれも滅ぼせばいい、不良の職場には犯罪組織じゃなくて更生して一般企業を選べばいい、地域の問題を解決したとか言っても暴力を用いてだ、一部の素人の受益者の言い分など聞く必要はない。暴力団を守ろうと言う知識人を自称する彼らは社会の秩序や治安を一体なんだと思っているのだろうか?

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