ピグマリオン効果

 ピグマリオン効果は、1964年にローゼンタールらによって行われた実験に基づく推測で、教育者がこの子の才能は伸びると期待を持って接した生徒の方がそうでない生徒よりも実際に学習効果が上がるとするものだ。この実験では潜在能力の高い(今後、学力が伸びると見込まれる)児童の名簿と偽って、単にランダムに児童を選んだだけの誤情報を小学校教師に伝えたにもかかわらず、その名簿に名前のあった児童は本当に他より成績が向上したという。これは、名簿を見た教師が意図的か無意識にかは別として、名簿に名のあった児童への指導をより熱心に行ったり、試験の採点時にバイアスが働いた可能性がある。

 この実験の再現性には疑念ももたれており、やはり教師個人の資質や性格によるバラツキが大きいのだろう。心理学の実験は科学的に妥当なデザインが困難な場合が多いので、心理学者なる人物が提唱する理論は必ずしも事実では無く、提唱者の偏見であることもしばしばだ。このピグマリオン効果も良くてそういう傾向がありそうだ程度に考えておいた方が良い。

 もちろん、もし教育者が特定の児童に特に目をかけて指導にあたればその分、児童の学習効果が上がりやすいであろうことは、実験をせずとも頷ける話だ。だが逆に、教師のリソースが限られている教室で特定の児童に集中的な指導を行えば、十分な指導を受けられない児童が発生し、その児童の学習効率が下がるのも当然だろう。

 ピグマリオン効果は、優秀だと期待された児童の成績があがった点に注目されがちだが、その他の児童の学習効率が落ちたのだとすればそちらの方が問題だ。

 さらに、教師の思い込みだけで過度な期待を込めた指導をするのは児童に余計なプレッシャーをかけることになり、児童の心にも悪影響をもたらすだろう。

 だから、教師のリソースを十分に児童の学習指導に充てるには、教師に児童を差別せずに平等に指導するように勧めるよりも、教師の数を増やし学習到達度別に少数ずつその子らにあわせた指導を行う方が良い。予算的には厳しいのかも知れないが、少子化の時代だからこそ教師数を減らさずに厚めの教育が実施できるようにすべきだと思う。

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