お血脈
落語のお血脈は善光寺の御印文頂戴を題材にしたコメディです。御印文は善光寺如来と同じ閻浮檀金で出来ている宝印で、牛王宝印、牛王噞印、往生決定の三つです。これらの宝印は如来の分身とされます。これを頭に押してもらうと極楽浄土への往生が約束されると伝えられています。現代でも1月7〜15日と前立本尊の御開帳の際に善光寺で僧侶が参拝客にこの印を押す行事があります。
落語のお血脈のあらすじは、善光寺の御印文頂戴の為に地獄に落ちる人がいなくなり、困った閻魔大王が地獄にいた大盗人の石川五右衛門に命じて善光寺の御印文を盗み出そうとします。善光寺に忍び込み首尾よく御印文を手にした五右衛門ですがコレさえあれば大願成就と御印文を押しいただいてしまいそのまま極楽往生してしまうというオチです。
さて、落語では御印文のことをお血脈と呼んでいますが、善光寺でお血脈というと善光寺を管理するお寺の一つである天台宗の大勧進で授与される融通念仏の系譜のことです。融通念仏宗は天台の僧侶であった良忍が平安時代後期にワン・フォー・オール、オール・フォー・ワンのラグビーのような精神で作り上げた浄土教系の宗派です。一人の念仏はみんなのために、みんなの念仏は一人のために、一つの念仏の行はすべての念仏の行に通じ、全ての念仏の行は今自分が唱えている念仏につながるというような感じで、ハーモニーの力で全ての人を極楽に往生させるぜという感じの宗旨です。善光寺大勧進ではこれの系譜を受けつでいるとの考えから、江戸時代の1783年の浅間山大噴火で被災し絶望に打ちひしがれる人達に、この系譜を書いた紙をお血脈として配って彼らの極楽往生を約束したのでした。
苦境の中、孤独に頑張っているように感じても広い世界には心を同じくする人がいますし、自分の努力もまた無駄にはならないのです。
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