オリンピック選手の確信犯
オリンピック憲章は、スポーツを通じて相互理解を深め世界平和を目指す目的があり、対立を避けるという発想から、競技会場で選手が政治や宗教や人種などに関する宣伝活動を禁じている。
しかし、オリンピックで注目を浴びる選手が、その注目を利用して何からの政治的アピールをすることは時々おきる。これらは選手がオリンピックのルールは理解したうえで、自分たちの信条の方が優先されると信じて起こす確信犯だ。
1968年のメキシコシティ五輪では200m走の金メダリストのトミー・スミス(米)と銅メダリストのジョン・カーロス(米)が黒人差別に講義して表彰台で拳を突き上げた。IOCはこれらの抗議活動を、オリンピック精神に対する計画的で暴力的な違反だとして、米国選手団としての彼らの資格を剥奪し選手村から追放している。アメリカ国内からもロサンゼルス・タイムズは彼らがナチス風の敬礼をしたなどといいがかりをつけ侮辱した。
2016年のリオデジャネイロ五輪のマラソン競技で銀メダルを取得したエチオピアのフェイサ・リレサ選手は政府による自民族虐殺に抗議を示すポーズをゴール直前に示した。ところが1968年とはうって変わって、IOCが行なった処分は軽い口頭注意だけだった。事実上の無罪放免だ。時代は変わってきたようだ。
そして、今回の東京五輪では事実上これらの抗議活動は黙認されている。女子サッカーの日本イギリス戦では双方のチームが片膝をついて黒人差別への抗議の意思を示した。彼女らは処分を受けてない。
昨日は女子砲丸投げの銀メダリストで黒人のレーベン・サンダーズ(米)が表彰台で抑圧した人々との連帯を示すポーズを取った。1968年の再来だ。今のところは彼女にも処分は下っていない。
こうした流れは別に良いことなのだが、今や確信犯の方が多数派だ。時代にあった新しく明確な基準を設けておかないといけない。ルールが空文化すれば、そのうちに人々が許容出来るものばかりではなく、領土問題とか宗教対立を取り上げる選手も出てきかねない。IOCにはお金儲け以外にも注意を払っていただきたいものだ。
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