一般病床の減少
医療者ならば常識の範疇に入る話かと思うが、現在の日本ではコロナ対策により、一般の病床が急速に減少している。新型コロナウイルス感染症以外の病気に対しても病院はその対応能力を落としている。連日の報道では、どちらかと言うとコロナ病床の逼迫度や不足の話が多いので、本日は一般病棟の話をしたい。
まず、なぜコロナ対策で一般の病床が減るのかだが、もちろん物理的なベッドが消失した訳ではない。一般の病床をコロナ用の病床に転用するから減少するのだ。ただ、これはコロナ病床が1つ増えたら一般病床が1つ減る事を意味しない。小生が勤務する病院ではコロナ病床を1つ増やすと、一般病床が10床消滅する。
なぜか。病院によって違いはあるが、多くの病院では一般病床7つに対して看護師1人が対応にあたっている。対してコロナの病床1つには1〜2名の看護師を必要とする。これは新型コロナウイルス感染症の患者自体が注意深い観察を要する上に、厳重な感染対策下で行われる介護や診療には準備や後始末にも時間がかかるので大量の人員を必要とするからだ。つまり、1つのコロナ病床を運用するのに必要な1〜2名の看護師を確保するには7〜14の一般病床を潰さなければならないことになる。
つまり、看護師を補充できれば一般病床の減少にはブレーキをかけうるが、現場で十分に働ける人材は降って湧いたりしない。相応の教育期間が必要であり、また雇うにしても財源も無限ではない。逆に、看護師1人あたりの病床数を増やせば当然ながら看護の質は低下するし事故の発生率も増えるだろうし何より看護師が疲弊して倒れればますます人手不足に拍車がかかる。要は、新型コロナウイルス感染症が拡大する以上は一般病床の減少もまた不可避だと言える。
今後も状況が悪化すればあらゆる病気や怪我に対して医療の供給が極度に不足する恐れがある。このため小生もいつもにも増して、余計な怪我などしないように安全運転をこころがけ、水害などの災害が予測される時は帰宅も含めて無理な移動は控え、体調管理に気を使うようにしている。今後も当面は注意して行きたい。
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