病状説明
日常の診療において、患者様やそのご家族様に対して、いくら懇切丁寧に説明しても、後日、全然説明を受けていないとクレームがつくことがある。これはどの業種でも同じだと思うが、相手が説明の内容を理解していなければ説明を受けていないのと同じだから起こる現象だ。
なるべく分かりやすく説明して、理解したかを確認し、相手が分かったと言ったとしても、最後に「何か他に質問はありませんか?」と尋ねた時に今しがた説明した事を質問される事もある。
いや、そんな事態になるのはお前の説明が悪いからだろうというご批判もあるかと思うが、遺憾ながら体感で20〜30人に1人くらいは、著しく理解力に乏しい人がいる。認知機能にいくらかの問題がある人だって少なくはない。
そういう人達に対しては、どこが悪くてどのくらい死にそうなのかなど、最低限理解して欲しい事を伝えた上で、後は医療者も御家族様とともに頑張っているという心情面での理解・共感を得るのが重要だ。説明を理解いただけない方からは、こちらの目つきが悪いとか話し方が冷たいとかと言われることが多い。これは、相手が理解してくれないことでこちらの苛立ちが表情や声色に出ている可能性もあるが、何を言われているかの分からないという相手方の恐怖や不安が説明者に投影されている側面もあるだろう。このような理由で、理解力に乏しい方からは感情面での不満が生じやすいので、医療者に敵意は無いと実感いただく必要がある。共感的な接し方をとるように留意したい。
また、患者様がよく理解していないと、例えば何らかの検査を行った時に、モルモットにされたなどと言ってお怒りになられる事がある。体に侵襲を伴う検査や大学や研究機関に依頼する検査を行う場合は重々用心が必要だ。
コロナ禍において、入院患者への面会はどの病院でもほぼ禁止されていると思うが、患者様に御家族様が直接会って話せない現状は、御家族様への病状説明の理解度にやはり負の影響がある。用心したいものだ。
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