ビュリダンのロバ
ビュリダンのロバという話がある。力学の基礎を築いたことで知られる哲学者のビュリダンは意志は理性が良いと認めない限り決定出来ないとしていた。これに反論するために、ビュリダンのような考えを持つロバの前に2つの同じ質と量の干し草の束を置いたら双方に対して等しい欲求を持つロバはどちらも選べずに餓死してしまうとした例え話だ。理性ではどちらの干し草も同じであり優劣を決められないからだ。これは割と知られた話だが出典が明らかでないことでも有名だ。
さて、この話には矛盾がある。もしロバが理性的な判断を下したならばどちらとも食するだろうからだ。そうすると意志は理性により決定されたことになる。左右に等価な食事を置かれた時にどちらも選べずに餓死にしてしまうのは愚かさのせいだと言える。一般的に、ロバとは愚か者の比喩で使われる代表的な動物だ。
しかし、人生にはビュリダンのロバに似た状況が発生しうる。それは何らかの選択を迫られた時に、どの選択肢が良いのか理性では判断がつかない時だ。ビュリダンのロバと違い、人生の選択では一つを選ぶともう一つは選べなくなるから悩ましい。そのような場合はどちらも選べずに迷っていると選択する権利から失われてしまう。例えば就職先や結婚などでどちらを選ぶのかを委ねられている場合などがそうだ。決断には時間制限がある。「両方とも!」などと答えれば殆どの場合その両方とも失うことになるだろう。
そうして、多くの人はどちらが良かったのか分からない選択をした後になって、違う選択をした方が良かったのではないかと思ってしまうものだ。これは人が本質的に貪欲だから生じることだ。そんな試せないことで悩むよりも、選択した事をより良くすることに注力すべきだ。どうしようもない事で悩むのは時間と労力の無駄でしか無い。
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