引導

 浄土真宗以外の伝統宗派での葬儀にはだいたい死者に引導を渡す儀式が行われます。元々、引導は道教で言うところの気を体内に引き入れる事を意味したり、一般の漢語で手引するという意味がありましたが、仏教では衆生を仏教に導くとの意味になりました。現代では葬式で死者を仏界に導き成仏していただく儀式の事です。ただ、死後も追善供養はするので基本的に故人は成仏までは行かずに菩薩となり働いていることになります。仏に対して供養は出来ますが、仏に追善(生者が善行を積みその功徳を死者に振り向けること)をする必要はないからです。また、故人が菩薩になれずに地獄や餓鬼や畜生界などに転生したとしても苦しまずに済むように追善供養はある訳です。ちなみに浄土真宗で引導も追善供養もしないのは、門徒は死後即極楽浄土に生まれ成仏すると考えられているからです。

 大乗仏教の特徴の一つに信徒が仏になろうとする事があります。浄土真宗の死後は即成仏するという発想と同様に、他の伝統宗派の引導を渡して追善供養をするという行為も故人を成仏させるという目的でなされます。なお、密教系の宗派では生存中の即身成仏を目指していますが、実際に即身成仏する信者は通常は存在せず、その葬儀では引導を渡して火葬の前に即身成仏させようとします。

 生前が良い人も悪い人も一律に仏になってくださいと導く引導の風習は優しさで出来ています。仏教以外で引導を渡すと言うと、人を諦めさせたり解任などの処分を下したりする時に使われますが、そういう局面で引導を渡す時にも本来の引導の持つ優しさをもって行いたいものです。

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