五輪

 一般に五輪というとオリンピックですが、仏教で五輪というと宮本武蔵の五輪書で有名な方の五輪すなわち地水火風空の五つのことで、これらが全ての物質を構成しているとする古代インドの元素論です。古代ヨーロッパにも同様の発想はあり、何かしらの文化交流の結果かも知れません。なお、五輪は元素論ですので空は大乗仏教の空ではなく他の四元素が存在する場(空間)を指します。

 この五輪を象徴する塔が五輪塔として知られており、当初は仏の供養として作られました。下から地を象徴する立方体と、水を象徴する球体、火を象徴する四角錐、風を象徴する半球、空を象徴する宝珠形の石材を積んで作られています。こうした五輪塔は伝説ではインドから伝わった事になっていますが、実際には日本で誕生したと考えられています。密教的には、この五輪塔を印を組んで座する修行者に見立てて成仏を意味するものと解釈されています。五輪塔やそれを模した卒塔婆(板塔婆)が死者の成仏を祈る追善供養に使われるようになったのはこうした影響があります。今でも多くのお寺で年忌法要などの際に追善供養の為に卒塔婆が用いられていますが、浄土真宗系のお寺ではその教義上(門信徒は死後すぐに成仏するので)追善供養を必要とせずそのための卒塔婆を立てる風習もありません。

 写真は京都市伏見区にある円通山大黒寺にある宝暦治水事件で非業の死を遂げた薩摩藩家老の平田靱負の墓として立つ五輪塔です。


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