チェンバレン

 昨日、中国共産党結党100周年記念の日に際して日本の主要な政党が次々に祝辞を送る中、日本共産党、国民民主党、日本維新の会は祝辞を送らなかった。日本共産党と中国共産党は昔から仲が悪く去年1月には日本共産党の志位委員長が「中国の党は、『社会主義』『共産党』を名乗っているが、その大国主義・覇権主義、人権侵害の行動は、『社会主義』とは無縁で、『共産党』の名に値しない」とまで言っており当然の対応だろう。国民民主党は概ね旧民主党右派勢力が母体であり、はじめから右派的である日本維新の会とあわせて共産党と距離を置くのはこちらも当然と言える。一方で、その他の主要政党はこぞって祝辞を送った。このうち中国共産党に融和的な左派の立憲民主党や社民党が祝辞を送るのはまあさもありなんと言ったところだが、少なくとも建前上は独裁制に反対し自由と民主主義の政党を標榜している自由民主党までが祝辞を送ったのは平和を愛する世界の諸国民への背信行為だと断言せざるを得ない。また中国を非難する国会決議をただ一党で反対し廃案に持ち込むことでウイグルや香港の人権蹂躙を許容する立場を鮮明とした公明党もまた「一つの政党で100年を迎えること自体、なかなかないことだ。なお一層、世界の平和と発展、安定のために力を尽くしていただきたい」とまで言う祝辞を送って中国共産党を礼賛していた。こんな政党が日本の政権を握っている事に恐怖を覚える。

 これらの政党の国会での議席数をみても分かる通り、日本の政治家の大半は中国共産党に甘いと言える。そこで思い出されるのがチェンバレンだ。

 ネヴィル・チェンバレンはイギリスの第60代首相で、第二次世界大戦前のドイツのヒトラー政権の領土拡張や各国への介入に融和的に対応し、ヒトラーの要求を次々に認めて戦争の回避に努めた。当時、チェンバレンは英国だけでなくアメリカなどでも平和の使者であるかのようにもてはやされた。もちろんチェンバレン自身も平和の為にとこうした宥和政策を行ったのだろうが、その結果としてナチスによって弾圧された人々の人権や命は犠牲となった。しかも、チェンバレンのこれらの決定は結局のところドイツが英仏に対抗しうるまでに軍事力を増強する時間と環境を与えただけで、それは戦争の原因となり犠牲は途方もなく増えることになった。イギリスにチェンバレンさえいなければ第二次世界大戦は起こらなかったかも知れない。

 目の前に明らかな軍事的野心を持った独裁者がいると言うのに日本の政治家たちは一体なにをしているのか?後世、日本の愚かな政治家どもが第三次世界大戦の原因となったと糾弾される可能性もそう低くは無いだろう。

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