ミャンマー非難決議
今回は昨日、衆議院で決議されたミャンマー軍事クーデターに対する非難について語ります。全文は以下のリンクの通りです。
ミャンマーにおける軍事クーデターを非難し、民主的な政治体制の早期回復を求める決議
さて、まず自国民や異民族の弾圧・虐殺を続けるミャンマーのクーデター政権に対して非難することは至極当然のことで、衆議院のこの決議はそれだけなら評価できます。
しかし、実はこの非難決議は、もともとウイグルや香港などの人権問題に憂慮した中国への非難決議を目指したものでした。その決議案の検討中に、ミャンマー問題もいれて非難しようという意見がでました。色々混ぜると問題の焦点がぼやけるのでそれぞれ別個にすべきだったのですが、ひとまとめで決議案が練られていきました。こうしてミャンマーの問題が加わっても、中国の人権問題に関しての批判もされる予定だったのですが、全会一致を目指すとの名目で、中国に対しては名指しを避けた弱い表現に変わっていきました。それでも何も言わないよりはマシかと思っていましが、実際に決議される段階では中国への批判は完全に消滅していました。
どうしてこのようなことになったのか考えてみます。欧米など自由主義諸国が中国への批判を強める中、少なくとも建前としては欧米と価値観を共有する日本が人権蹂躙に加担する訳にはいきません。しかし、日本と経済的な結びつきの強い中国に実効力のある制裁をしては不利益を被る経済陣も多く、もちろん中国も報復してくるでしょう。日本の大多数の国会議員の自由と民主主義を守ろうとする価値観は口先だけで胆力の欠片もありませんから、本音からいうと中国とトラブルを起こしたくは無いのです。そこで現実的な効力の無い対中非難決議なら欧米にもごまかしが効くと考えたのです。要はコウモリです。どっちにも良い顔をしようとする政策は、政治的に最悪なだけでなく、倫理的にも間違っていますが日本の国会議員の大半は愚かなので仕方ありません。さて、ただそれでも中国への非難決議はされる予定でした。しかし、議論が進むにつれ、中国の機嫌をそこねてはいけないという機運が強まり、並行して批判の対象となっていたミャンマー相手の非難であれば、欧米には日本は人権を守る国ですとのアピールができて、中国様にも阿る事ができると考え今回の結果に至ったのです。ところで、国会決議は全会一致が基本だから仕方がなかったなどとの擁護意見もネットでは見られますが、全会一致は慣習として目指してるだけで過半数の賛同で国会決議は可能です。つまり、何がなんでも人権を守ろうとした衆議院議員は全体の半数に及ばなかったことになります。
しかも、ミャンマー軍に対しての暴力の停止要請だけなら中国も言っている事で、日本が似たようなことをいってもインパクトに欠けます。ただ、中国の場合はミャンマーのクーデター政権を正当な交渉相手として暴力の停止を要請していますので、事実上クーデター政権を正当な政権として承認している点は違います。
今回の決議で日本の国会議員は米中両方にいい顔ができたと喜んでいるかも知れませんが、アメリカが日本のことを潜在的な中国の味方として警戒してくるのは避けられないでしょう。日本の国会は自由や民主主義を守る気などさらさら無く、目先の経済的利益にのみご執心であると自ら宣伝したようなものですから当然です。
結論としては今回のミャンマー非難決議は、中国を非難しなかったという問題の方が日本にとって深刻なのです。
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