音楽とジンクスと記憶とお経

 個人的な話で恐縮だが1987年にヒットしたSwing Out SisterのLPレコード"It's better to travel"をかけると嫌なことが起きるというジンクスが小生にはある。曲自体は好きだがこのレコードをかけると何かしら起きるので、もう30年以上このLPがターンテーブルに乗ることは無くなった。その後の時代がCDに変わりそれも廃れてデータ配信が主流の世の中になっても、新たに購入したり再生させることも無かった。無論、そんなジンクスは単なる偶然であると理解しているのだが、これらの音楽をかけて何かしらの凶事が起きるのを恐れていると言うよりは、これらの曲を聴くことで嫌な思い出もありありと再生されるのを避けているという面が大きい。

 一方で、1970年10月ウィーンのゾフィエンザールで録音されたサー・ゲオルグ・ショルティ指揮のタンホイザー(パリ版)をかけると何かしら良いことが起きたという経験から、これまた個人的に縁起のいい曲として、ここ一番の勝負所やそうで無い場合でもよく聴く歌劇となっている。もちろん、これも単なる偶然であり、聴いたからと言って常に良いことが起きるわけでもなく思い返せば残念なこともあったが、曲とともに思い出される良い記憶が世の中なんとかなるという気持ちを呼び起こさせてくれる。

 さて、世間一般ではお経は不吉で気持ち悪く縁起でもないと考える人も多いが、これも小生の音楽のジンクスと同様に、お経をお葬式の悲しい時にしか聴いていない事に由来するのかもしれない。お経を聴くと人生最悪の思い出が呼び起こされるというわけだ。逆に、今では少数派となったが、日常的にお勤めのあるご家庭では、良いことがあった日も悪いことがあった日もお経は人生とともにあるので特に悪いイメージもわかないだろうし、お経が人生の浮き沈みに関わらず心の支えになっていたのならありがたくも感じることだろう。

 お経が気味悪がられない社会が来ますように。

コメント

このブログの人気の投稿

妙好人、浅原才市の詩

現代中国の仏教

懐中名号