サンクコストと仏教
サンクコストとは経済学で回収不能な投資や労力の事を指す用語です。サンクコストにこだわって失敗した実例として、超音速旅客機コンコルドがあります。コンコルドは開発途中で採算に合わないと分かっていながら、英仏両政府はそれまでにかけたコストを惜しんで事業を強行して被害を拡大させたのです。この事件から、類似のケースにおける心理的要素からの判断ミスはコンコルドの誤謬とまで呼ばれます。
しかし、コンコルドに関して言えば、あの美しい機体と素晴らしい性能はロマンの塊です。また、コストを度外視した国家の威信とか技術力の誇示とかの狙いもあったのでしょう。そう考えると一概に誤謬とまで言えるかどうかは分かりませんが、少なくとも商業的には大失敗でした。
この残念なケースから私達が得られる教訓は、今から行う事に関しての意思決定に、回収不能なサンクコストを影響させてはならないということです。考慮すべきはあくまでも現在の状況のみです。商業的な失敗を最小限に抑えるのならば、今後の採算が合わないと分かった時点で、それまでにいくら莫大な金額をコンコルドの開発につぎ込んでいたとしても事業は中止するべきだったということになります。
似たような考えは南伝仏教の一夜賢者経にも説かれています。もう変更することが出来ない過去を追ったり、明日はもう死んでいるかもしれないのに未来を色々夢想すること無く、今をよく観察し動じることなくやるべきことをやるようにという内容です。経済学や商売では先を色々と予測し様々な戦略を立てることが肝心ですが、仏道修行においては先の保証なんて無いのですから今まさに悟ってやるくらいの勢いで現在に集中しているのです。この辺は目的が違うので構わないかと思いますが、いずれも既に変更出来ない過去に執着するのは有害な訳です。過去の経験から学ぶことも多いものの、過去自体は変えられません。今の状態をよくみて時間を大事に行動して参りましょう。
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