苦空無常無我

 苦空無常無我は有名な観無量寿経や無量義経などにも出てくる文言で、この世の有様を示す言葉です。この文言には大乗仏教の根幹である空が含まれていますので、大乗以前の経典には出てきませんが、原型となったのは初期仏典のダンマパダ(法句経)にも説かれる三相の考えかと思われます。

 ダンマパダの277〜279には、全てのものは無常であり苦であり全ての事柄に我というものは存在せず、これらを明らかな智慧をもって観れば苦しみから遠ざかり清くあることが出来ると説かれています。この世は苦と無常と無我の三相から出来ている訳です。

 仏教の基本要件である四法印は一切皆苦、諸行無常、諸法無我、涅槃寂静です。この前の三つである三相を観た結果、涅槃寂静に至る事になります。

 空の概念は、大乗仏教以前の仏教の縁起の思想を言い換えて重視した考えであり、三相を内包するかと思いますが、あえて三相に空を入れて苦空無常無我とした理由は、語呂の良さ以外にも、苦空無常無我の語順にすることで、この世に満ちる苦だって縁起によって成り立つかりそめの存在でありその中に自分はいないという印象を与える文言に仕上がっているようにも思えます。

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