余ったワクチン

 新型コロナウイルスのワクチン接種で予定していた人の体調や諸事情でキャンセルになった場合に、とりあえず手近な人に接種するという行為がみられます。ワクチンは常温に戻してからの使用期限があるので破棄するくらいなら有効活用した方が良いのですが、一部には優先枠で無い人に対する接種を批判する声もでています。

 先月下旬に鹿児島の離島でワクチンの接種が行われましたが、こうした余りが出る事態も想定しており余ったワクチンは無駄にすることなく船員たちに接種されています。この時は称賛の声も上がっていたはずです。

 今年1月ごろのアメリカでも同様の状況はあり、高齢者などの優先接種会場で余って破棄される予定のワクチンは付近にいる人に接種されました。この破棄予定のワクチンを求めて会場に接種を希望する人があつまるという現象もみられましたが、特に批判されることもありませんでした。ワクチンを無駄にすることなくなるべく多くの人に接種させる事が何よりも大事だからです。

 今月になって、こうした予定外の接種に批判が出てきたのは、優先枠外の行政や企業のエラい人が政治的な圧力をかけていち早い接種を行ったり行おうとしていた不正事件が発覚したため、破棄予定のワクチンを使用した市長や医療従事者の家族まであたかも不当に優遇されているかのように批判されはじめたからです。

 確かに、わざとワクチンを余らせてコネのある人がいち早くワクチンを接種するという可能性もありますが、そんな少数の不正利用を恐れて余ったワクチンを全て破棄するのは非効率極まりありません。不正対策として、不自然なワクチン残余が出た会場は査察を入れるようにすれば不正も減らせる事でしょう。

 二人の人間が溺れそうになっている時にどちらを助けるかという問題で、自分に近い距離の人からという回答をするのは仏教法話などで良く聞きますが、余っているワクチンを有効期限内にさしあたり近場の人に接種してもらうのも良いことです。それではどうしても受益者に偏りが出ると言うのであれば、ワクチン接種が開始され頃のアメリカのように会場の外で待つ人達に余ったワクチンを接種できるようなシステムを作るのも良いと思われ、行政には一考いただきたいところです。

 世間もピリピリしており、とにかく何か口実を見つけては他人を批判する風潮があります。こんな時こそ慈悲の心を大切にしたいものです。

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