布薩(ウポーサタ)

 かつて出家僧達は新月と満月の日に集まり、自分達が戒律に反していないかを確認するために具足戒の項目を読み上げる布薩(ウポーサタ)という集会をしていました。初期仏教の経典であるサンユッタ・ニカーヤにもジャントゥという神の子がこの布薩の席にあらわれて、堕落した僧に苦言する話があります。

 そもそもの戒律がゆるい日本ではあまりメジャーな集まりではありませんでしたが、主に禅宗や律宗などで行うお寺もあります。また、在家信者が各月の8日、14、15日、23日、29、30日の6日間(六斎日)だけでも8つの戒(八斎戒)を守って身を慎むことも布薩と呼ばれます。

 日本の僧侶で具足戒を受けている人はごく少数でしょうし、在家信者も現代において六斎日に八斎戒の全てを守る人は殆どいないでしょうが、定期的に我が身を振り返る機会を設けておく事は良いことだと思います。

 ちなみに八斎戒は1.殺さない、2.盗まない、3.性行為をしない、4.嘘をつかない、5.酒を飲まない、6.正午以降は食事をしない、7.歌舞音曲を鑑賞したり着飾ったり香水を用いたりしない、8.地面に敷いた狭い寝具を使って休む、の八つです。この内、前の5つは在家信者が日頃から守る義務のある五戒に似ていますが、性行為に関する規定が不道徳な性行為の禁止から性行為そのものの禁止と厳しくなっています。

 そもそもの布薩は自分の行いが戒律に反してないかを省みる日なのですから、六斎日に八斎戒を守るようにとされたのは在家信者も定期的に慎まやかに過ごして自省せよとの意味が込められているのかと思われます。しかし、健康のために寝具はある程度の質は欲しいところですので、最後の項目を実際に守るのはお勧めしません。また、正午以降の食事摂取の禁止も、特に暑い時期や寒い時期は体によろしくないかと思われこれもお勧めしません。殺さないのと盗まないのと嘘をつかないのと不倫をしないのは日頃から守らなくてはならないことです。特定の日に自省する時間を設けるのなら、その日は酔い潰れたり遊び疲れてクタクタにならないようにするくらいが、現代的かも知れません。

 多少ゆるくても定期的に自分の行いや考えを省みる機会を予定しておかないと、人は容易に堕落します。月末の10分程でも時間をとって反省し翌月の行動に活かす習慣も一種の布薩とよべると思います。良ければお試し下さい。

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