1212年
茨木のり子の「知」という詩に「仏教の渡来は一二一二年と暗記して 日本の千二百年代をすっかり解ったようなつもり」との一文がある。はじめこれを目にした時はいや一体何を言っているのだ!?と驚いてその後の詩文の鑑賞などありはしなかった。後で知った事だがこれは皇紀1212年の事で西暦だと552年となる。現代では仏教公伝は西暦538年との説が有力だが、第二次世界大戦の敗戦までは仏教公伝は1212年と教えられていたのだ。
しかしながら、この詩は1971年発行の「人名詩集」に収録されており、もうとっくに皇紀での年号記憶の教育はされていない時代だ。茨木自身が子供の頃にそう習ったのは間違いなく昔に作った詩なのかも知れないが、端的に言って左派よりの茨木があえて皇紀を使ってそのまま発行した理由が気になって色々と想像してしまう。
私が知らないだけでどこかで種明かし済みの可能性もあるけど、こうして作者の意図に思いを巡らすのも何やら先人のイタズラに引っかかったような面白さを感じてしまう。正解かどうかは分からないがこの詩は解ったつもりになる事と伝える事の難しさが詠まれており、ワザと分かりにくくしたと勝手に納得している。詩自体を紹介したいのはやまやまだが、まだ著作権は生きているので避けた。
コメント
コメントを投稿