ジンクス

 黒猫が目の前を横切ったり、鏡が割れたり、ハシゴの下を通ったりすると悪い事が起きるという迷信があり、こうした実際には因果関係が無いのに何々をすれば悪いことが起きると言う形式の迷信をジンクスと呼びます。

 しかし黒猫はともかく、割れた鏡で怪我をするかもしれないのは危険だし、上から何かが落ちてくるかも知れないハシゴの下を通るのも危険があります。ジンクスでは鏡が割れたりハシゴの下を通ると全く無関係な局面で悪いことがあると言っているのですが、その不幸の元となる行為には何らかの危険性があるものも少なくはありません。

 また、全く関係ないのに多くの人が信じるから効力を発揮するジンクスもあります。日本だと仏滅や友引で有名な六曜がそれにあたります。多くの仏教宗派では六曜による吉凶判断を否定していますが、実際にはお葬式の日程を友引から外して設定したり、祝い事の日は仏滅や赤口を外して大安を選んだりします。これは喪主などが実際に気にしていると言うよりも訪れる人達に気にする人がいたらとの配慮からなされるのでしょう。しかし、実際のところ葬儀にお参りする人たちの大多数もあまり六曜は気にしていないと思われます。実際に効力を発揮しないとわかっているジンクスでも風習として皆が従うのなら、少なくとも表面上はジンクスが実際に効力をもったのと変わりありません。しかし、こうしたジンクスは他者への思いやりの表れともみることができますので、一概に悪いのかどうかは個々の判断によるかと思います。

 投資においてもテクニカル分析と呼ばれる考え方では、企業の実際の状態よりも値段の推移を見て売り買いされます。統計的に分析されたこれらの予測は当たることも多いのですが、実のところ多くの参加者がそのようになると信じて売り買いするから、実際に予測通りに値が動くという側面もあります。こうした例もジンクスが実現している例とも言えます。

 一見すると無意味な迷信やジンクスも、それを信じる人が多い社会では一定の効果を持つことがあるので文化の異なる土地に行くときには注意が必要です。また、忌み言葉などのジンクスは迷信というよりは礼儀となっている事もあり配慮が必要です。難しいですね。

コメント

このブログの人気の投稿

妙好人、浅原才市の詩

現代中国の仏教

懐中名号