ツァルツァー・ナムジル
モンゴルの昔話にツァルツァー・ナムジルというものがあります。ツァルツァー・ナムジルという名の愚か者がお寺に住んで三年間お経を教わりましたが、全く習得できずお寺の僧にもう家に帰るように言われます。最後に一つだけでもと教えを乞うツァルツァー・ナムジルに僧はお経を教えず、帰る途中に起きる全てをよく見て覚えればそれが良い知恵となるだろうと答え、ツァルツァー・ナムジルは教えを受けることが出来ずに帰路につきます。その道中、様々な勘違いから王様の信頼を得て宝物をもらい、その後は郷里に帰って正直に幸せに生きたという話です。
ツァルツァー・ナムジルが寺を出るときに言われた自分の周囲に注意を払う行為は、仏教の八正道では正念であり今風な呼び名だとマインドフルネスと同じことだと思われます。モンゴルはチベット仏教の文化圏であり、昔話にもその影響が出ているのかも知れません。物語の最後も王様の元で栄誉栄華を極めるのではなく、故郷で正直に暮らすことを良しとするあたりがいかにも仏教説話的な昔話です。
モンゴルの昔話というと日本ではスーホの白い馬が有名ですが、あれは中国共産党に占領されたあとの南モンゴルで創作された共産主義イデオロギーのプロパガンダ目的の児童文学でありモンゴルの文化を反映したものではありません。まあ、話自体は面白いのですがモンゴル人に言わせると違和感のある内容だとのことです。そんなわけで意外と日本では認知度の低いモンゴルの昔話については以下にリンクのある「エルヒー・メルゲンと七つの太陽」がお薦めです。
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